悲しい予感を胸に抱いて、アタシたちは江戸の沖田さんのもとへ戻った。調べてきた情報を伝えると、沖田さんは迷いのない顔をして、スッと立ち上がった。
「情報ありがとう。ボクも流山に行くよ。ちょっと待ってて。準備するから」
そして、おもむろに寝巻の腰紐を解き始める。
「ちょ、ちょっと沖田さん、いきなり着替え始めないでください! こんなシリアスな場面にそういうサービスシーン、いりませんっ!」
ラフ先生がケラケラと笑い出した。
「というか、今さらなんだけど、最近の沖田、ずっと寝巻姿だったろ? これ、下着と同じようなもんなんだぜ。二十一世紀に置き換えて考えてみな。けっこう赤面モノだろ」
「ややややめてください! 沖田さんストップ! ああもう、だから腰紐解かないでくださいってば!」
するすると、腰紐が畳の上に落ちた。寝巻の前がはだけかける。のど仏と、鎖骨、色白だけど筋肉の付いた胸板。割れた腹筋……が見えかけて、アタシは回れ右をした。
ファサッと布が落ちる音がした。沖田さんがクスクス笑っている。
「見られても減るもんじゃないんだけど。それにしても、やっぱり、ここ何ヶ月かで一気に貧相になっちまった。前はもっといいカラダしてたのにな」
「さっさと着替えてください! そもそも、この演出、何なんですか? ピアズでの着替えなんて、装備品のボックスを開いてチェックを付け替えるだけでしょう?」
アタシの態度がおもしろいんだろう。ラフ先生は手なんか叩いて実況中継し始めた。
「やせて貧相になってもそれかよ。十分すげぇじゃん。無駄な肉が完全に落ちてるぶん、腹筋の形がクッキリだし。あー、後ろ姿、色っぽい。きわどいところに、ほくろ発見。CG細けぇな」
やめてください。いろいろ想像してしまいます。
そもそもアタシ、BLもちょっとたしなむほうだから、無防備に脱いでいる沖田さんと、実況したり着付けを手伝ったりするラフ先生のやり取りが……ああもう、恥ずかしすぎる!
やがて、沖田さんの声が聞こえた。
「着替え終わったよ。ラフ、手伝ってくれてありがとう。ミユメ、こっち向いて大丈夫だよ」
「……ほんとですか?」
「疑い深いなぁ」
沖田さんがアタシの正面に回り込んだ。キリリとした袴《はかま》姿だ。すでに腰に環断《わだち》を差している。
「久しぶりにその格好ですね」
「うん。背筋が伸びるよ。グズグズしていられない。すぐに出発しよう。おいで、ヤミ」
沖田さんは、足下にすり寄るヤミを抱き上げた。アタシは、思わず沖田さんの手をつかんだ。
「ヤミのチカラを借りたら妖に近付くんですよね? 大丈夫なんですか?」
「でも、ヤミがいなきゃ動けないから。ボクは大丈夫だよ。妖になったとしても、理性を保ってみせる。近藤さんたちと一緒に最期まで戦いたい。この気持ちがある限り、ボクは闇に呑まれないよ」
にゃあ、とヤミが鳴いた。沖田さんがヤミを抱きしめて、ヤミが沖田さんの内側に溶け込んだ。沖田さんの姿が変化する。黒猫の耳と二股の尻尾が生えて、微笑んだ口に小さな牙がのぞく。目は金色に輝いた。
アタシたちは屋敷の外に出た。
「情報ありがとう。ボクも流山に行くよ。ちょっと待ってて。準備するから」
そして、おもむろに寝巻の腰紐を解き始める。
「ちょ、ちょっと沖田さん、いきなり着替え始めないでください! こんなシリアスな場面にそういうサービスシーン、いりませんっ!」
ラフ先生がケラケラと笑い出した。
「というか、今さらなんだけど、最近の沖田、ずっと寝巻姿だったろ? これ、下着と同じようなもんなんだぜ。二十一世紀に置き換えて考えてみな。けっこう赤面モノだろ」
「ややややめてください! 沖田さんストップ! ああもう、だから腰紐解かないでくださいってば!」
するすると、腰紐が畳の上に落ちた。寝巻の前がはだけかける。のど仏と、鎖骨、色白だけど筋肉の付いた胸板。割れた腹筋……が見えかけて、アタシは回れ右をした。
ファサッと布が落ちる音がした。沖田さんがクスクス笑っている。
「見られても減るもんじゃないんだけど。それにしても、やっぱり、ここ何ヶ月かで一気に貧相になっちまった。前はもっといいカラダしてたのにな」
「さっさと着替えてください! そもそも、この演出、何なんですか? ピアズでの着替えなんて、装備品のボックスを開いてチェックを付け替えるだけでしょう?」
アタシの態度がおもしろいんだろう。ラフ先生は手なんか叩いて実況中継し始めた。
「やせて貧相になってもそれかよ。十分すげぇじゃん。無駄な肉が完全に落ちてるぶん、腹筋の形がクッキリだし。あー、後ろ姿、色っぽい。きわどいところに、ほくろ発見。CG細けぇな」
やめてください。いろいろ想像してしまいます。
そもそもアタシ、BLもちょっとたしなむほうだから、無防備に脱いでいる沖田さんと、実況したり着付けを手伝ったりするラフ先生のやり取りが……ああもう、恥ずかしすぎる!
やがて、沖田さんの声が聞こえた。
「着替え終わったよ。ラフ、手伝ってくれてありがとう。ミユメ、こっち向いて大丈夫だよ」
「……ほんとですか?」
「疑い深いなぁ」
沖田さんがアタシの正面に回り込んだ。キリリとした袴《はかま》姿だ。すでに腰に環断《わだち》を差している。
「久しぶりにその格好ですね」
「うん。背筋が伸びるよ。グズグズしていられない。すぐに出発しよう。おいで、ヤミ」
沖田さんは、足下にすり寄るヤミを抱き上げた。アタシは、思わず沖田さんの手をつかんだ。
「ヤミのチカラを借りたら妖に近付くんですよね? 大丈夫なんですか?」
「でも、ヤミがいなきゃ動けないから。ボクは大丈夫だよ。妖になったとしても、理性を保ってみせる。近藤さんたちと一緒に最期まで戦いたい。この気持ちがある限り、ボクは闇に呑まれないよ」
にゃあ、とヤミが鳴いた。沖田さんがヤミを抱きしめて、ヤミが沖田さんの内側に溶け込んだ。沖田さんの姿が変化する。黒猫の耳と二股の尻尾が生えて、微笑んだ口に小さな牙がのぞく。目は金色に輝いた。
アタシたちは屋敷の外に出た。