赤いヘビの目が沖田さんをとらえた。ぶわっと、吹き付けるように殺気がかさを増す。
と同時に、沖田さんが技を仕掛ける。
“単焔薙―タンエンテイ―”
横なぎの一閃。飛び掛かってくるヘビへと、正面からぶつかっていく。
「無茶だろ!」
ラフ先生がヘビに横から突撃した。両腕の剣を、ハサミの刃に見立てて。
“chill out”
三つ巴にぶつかり合うエネルギー。ヘビの巨体がのけぞる。ラフ先生もダメージを受ける。でも、バランスを崩しながらも着地する。
沖田さんは吹っ飛ばされて、フィールドに倒れ込んだ。
アタシは魔法を完成させた。まずラフ先生に――。
「激励―チアアップ―!」
攻撃力アップの魔法をかけて。
アタシは沖田さんに駆け寄る。もう一つ、魔法を唱えながら。
「氷壁―アイスウォール―!」
倒れた沖田さんの前に、氷のバリアが生まれる。追撃をかけてくるヘビがバリアに跳ね返された。
「大丈夫ですか?」
駆け寄ったアタシは、沖田さんのパラメータをチェックする。ギョッとした。スタミナが極端に減っている。
沖田さんは立ち上がれない。ひどく咳き込んでいる。今までの、乾いた咳じゃない。胸の奥にからむような深い咳だ。
「にゃあ」
ヤミが沖田さんにすり寄った。二股の尻尾がゆらゆらして、沖田さんの体にまとわりつく。
ふーっ、と、うっすらとした効果音が聞こえた。
黒猫の体から黒い波動が染み出している。波動は沖田さんを包んだ。沖田さんの顔から苦痛の表情が引いていく。咳がようやく止まる。
「ありがとう、ヤミ。楽になった」
沖田さんはヤミを撫でた。その手のひらに、血が付いている。よく見れば、微笑んだか形の唇の端にも、赤い色。病気のせいで血を吐いたんだ。
氷のバリアの向こうで、ラフ先生が戦っている。アタシも急いで援護の魔法をコマンドした。狙うのは、とぐろを巻いた胴体。
「水檻―アクアケージ―!」
ガチン、と音を立てて、ヘビの体に拘束が掛かる。ヘビは重くて大きくいから、長時間はもたないけど。
「サンキュ、ミユメ! これなら叩きやすい!」
ラフ先生の豪快な双剣がうなる。ヘビのヒットポイントを着実に削っていく。
アタシはまた魔法の詠唱に入りながら。沖田さんを振り返った。
「戦えますか?」
沖田さんは口元を手で拭った。
「当然。戦えないんじゃ、ボクが生きてる意味ないからね。ヤミ、おいで。一緒に戦おう」
ヤミが、にゃあ、と返事をした。
沖田さんの右手の甲の紋様が、ゆらり、と光を発した。赤黒く、不気味な光だ。沖田さんが目を閉じる。
ヤミが沖田さんの体にすり寄った。そのまま、スッと沖田さんの中に入っていく。
ザワザワと風が起こった。沖田さんの体の内側から、黒い風が。
「沖田さん?」
ああァァ、と沖田さんが息を吐いた。その口が、にぃっと笑う。
黒髪の合間から黒猫の耳が生えた。はかまの腰から二股の尻尾が生えた。口元に小さな牙がのぞいた。
手の甲の、途切れがちで未完成な円環が光る。紋様がひとりでに描き込まれる。完全な円環に少し近付く。
沖田さんが目を開いた。金色だ。瞳の形は、猫のような縦長。らんらんと、楽しげに、金色の目が笑う。
「よし、ここから本気で行くね」
と同時に、沖田さんが技を仕掛ける。
“単焔薙―タンエンテイ―”
横なぎの一閃。飛び掛かってくるヘビへと、正面からぶつかっていく。
「無茶だろ!」
ラフ先生がヘビに横から突撃した。両腕の剣を、ハサミの刃に見立てて。
“chill out”
三つ巴にぶつかり合うエネルギー。ヘビの巨体がのけぞる。ラフ先生もダメージを受ける。でも、バランスを崩しながらも着地する。
沖田さんは吹っ飛ばされて、フィールドに倒れ込んだ。
アタシは魔法を完成させた。まずラフ先生に――。
「激励―チアアップ―!」
攻撃力アップの魔法をかけて。
アタシは沖田さんに駆け寄る。もう一つ、魔法を唱えながら。
「氷壁―アイスウォール―!」
倒れた沖田さんの前に、氷のバリアが生まれる。追撃をかけてくるヘビがバリアに跳ね返された。
「大丈夫ですか?」
駆け寄ったアタシは、沖田さんのパラメータをチェックする。ギョッとした。スタミナが極端に減っている。
沖田さんは立ち上がれない。ひどく咳き込んでいる。今までの、乾いた咳じゃない。胸の奥にからむような深い咳だ。
「にゃあ」
ヤミが沖田さんにすり寄った。二股の尻尾がゆらゆらして、沖田さんの体にまとわりつく。
ふーっ、と、うっすらとした効果音が聞こえた。
黒猫の体から黒い波動が染み出している。波動は沖田さんを包んだ。沖田さんの顔から苦痛の表情が引いていく。咳がようやく止まる。
「ありがとう、ヤミ。楽になった」
沖田さんはヤミを撫でた。その手のひらに、血が付いている。よく見れば、微笑んだか形の唇の端にも、赤い色。病気のせいで血を吐いたんだ。
氷のバリアの向こうで、ラフ先生が戦っている。アタシも急いで援護の魔法をコマンドした。狙うのは、とぐろを巻いた胴体。
「水檻―アクアケージ―!」
ガチン、と音を立てて、ヘビの体に拘束が掛かる。ヘビは重くて大きくいから、長時間はもたないけど。
「サンキュ、ミユメ! これなら叩きやすい!」
ラフ先生の豪快な双剣がうなる。ヘビのヒットポイントを着実に削っていく。
アタシはまた魔法の詠唱に入りながら。沖田さんを振り返った。
「戦えますか?」
沖田さんは口元を手で拭った。
「当然。戦えないんじゃ、ボクが生きてる意味ないからね。ヤミ、おいで。一緒に戦おう」
ヤミが、にゃあ、と返事をした。
沖田さんの右手の甲の紋様が、ゆらり、と光を発した。赤黒く、不気味な光だ。沖田さんが目を閉じる。
ヤミが沖田さんの体にすり寄った。そのまま、スッと沖田さんの中に入っていく。
ザワザワと風が起こった。沖田さんの体の内側から、黒い風が。
「沖田さん?」
ああァァ、と沖田さんが息を吐いた。その口が、にぃっと笑う。
黒髪の合間から黒猫の耳が生えた。はかまの腰から二股の尻尾が生えた。口元に小さな牙がのぞいた。
手の甲の、途切れがちで未完成な円環が光る。紋様がひとりでに描き込まれる。完全な円環に少し近付く。
沖田さんが目を開いた。金色だ。瞳の形は、猫のような縦長。らんらんと、楽しげに、金色の目が笑う。
「よし、ここから本気で行くね」