荒野の台地を下るにつれて、景色は鮮やかになっていく。カラフルな熱帯植物のフィールドは、「南島のステージ・ホヌア」っていうキャッチフレーズのとおりの景色だ。
「見て、海!」
行く手に海岸線が見え始めた。白砂の浜が緑葉の森に映える。空は青くて、日差しは明るい。
アタシたちの行く手に、たびたびモンスターが現れた。撃退するのに、それほど苦労はなかった。
でも、一度だけ、ヒヤッとした。アタシとラフの動線が重なって、効果的な攻撃ができなかったの。
なにやってんのよバカ! ってアタシが怒鳴るより先に。
「すまん。今のはオレが悪ぃ」
ラフは潔く頭を下げた。
なんていうか、毒気を抜かれた。
「べ、別に、どっちが悪いってこともないでしょっ」
「いや、おれのほうが出だしが遅かったし」
ニコルが間に入った。
「無事に倒せたんだから、よしとしようよ。もしシャリンがイヤでなければ、ボクが司令塔になってもいいよ?」
「ハッキリ言うと、イヤよ。指示されるのは嫌い。でも万が一、必要だと判断したときには、司令塔とやらをお任せするわ」
「了解、了解。たぶんね、普通にエンカウントするモンスター程度は問題ない。でも、ボス戦は連携プレーできるほうが安全だと思うよ」
「ふぅん?」
「お互いの凡ミスのせいでハジかれたら、本末転倒だからね」
ピアズの世界では、ユーザが操るアバターは死なない。死という概念が、基本的に存在しない。
アバターのヘルスポイントとスタミナポイントの両方が尽きた場合、死ぬわけじゃなくて、ステージからの追放というペナルティが課せられる。
ペナルティによってステージを追われることを「ハジかれる」ってう。一定回数以上ハジかれると、クラスを落とされる。
ちなみに、クラスとレベルは別の概念。クラスは、ユーザのテクニックによって段階分けされてる。レベルは、経験値を積めば積むほど上がっていく。
レベルが上がれば、ヘルスポイントとスタミナポイントの上限が上がる。ボーナスポイントも与えられる。それを攻撃力や敏捷性みたいな各能力に割り振って、アバターの基礎値を上げていく。
クラスが高い人はたいていレベルも高い。逆に、低いクラスにレベルが高い人がいることもある。
というのも、バトルの鍵を握るのはユーザのテクニックだから。基礎値はそれほど大きな問題にならない。テクニックがないユーザは、いつまで経ってもクラスを上げられない。
「アタシ、今まで一度もハジかれてないの。連勝記録に傷を付けないでほしいわね」
「ボクたちもだよ。ほら」
ニコルが示すパラメータボックスを、アタシはチラッと見た。
コイツ、アタシよりもレベルが低い。そのくせに、アタシと同じハイエストクラスにいるなんて。つまり、相当テクニックがあるってこと? なんかムカつく。
ユーザが口元に着けるリップパッチが、表情筋の動きを認識する。それをアバターに反映する。
アタシは今、ムッとしてる。現実では、顔にも出てると思う。
でも、画面の中に反映できるのは、ハッキリした表情だけ。微妙な苛立ちの表情なんてリップパッチは認識できないから、アバターのアタシは、愛らしい顔に無表情を保っている。
「見て、海!」
行く手に海岸線が見え始めた。白砂の浜が緑葉の森に映える。空は青くて、日差しは明るい。
アタシたちの行く手に、たびたびモンスターが現れた。撃退するのに、それほど苦労はなかった。
でも、一度だけ、ヒヤッとした。アタシとラフの動線が重なって、効果的な攻撃ができなかったの。
なにやってんのよバカ! ってアタシが怒鳴るより先に。
「すまん。今のはオレが悪ぃ」
ラフは潔く頭を下げた。
なんていうか、毒気を抜かれた。
「べ、別に、どっちが悪いってこともないでしょっ」
「いや、おれのほうが出だしが遅かったし」
ニコルが間に入った。
「無事に倒せたんだから、よしとしようよ。もしシャリンがイヤでなければ、ボクが司令塔になってもいいよ?」
「ハッキリ言うと、イヤよ。指示されるのは嫌い。でも万が一、必要だと判断したときには、司令塔とやらをお任せするわ」
「了解、了解。たぶんね、普通にエンカウントするモンスター程度は問題ない。でも、ボス戦は連携プレーできるほうが安全だと思うよ」
「ふぅん?」
「お互いの凡ミスのせいでハジかれたら、本末転倒だからね」
ピアズの世界では、ユーザが操るアバターは死なない。死という概念が、基本的に存在しない。
アバターのヘルスポイントとスタミナポイントの両方が尽きた場合、死ぬわけじゃなくて、ステージからの追放というペナルティが課せられる。
ペナルティによってステージを追われることを「ハジかれる」ってう。一定回数以上ハジかれると、クラスを落とされる。
ちなみに、クラスとレベルは別の概念。クラスは、ユーザのテクニックによって段階分けされてる。レベルは、経験値を積めば積むほど上がっていく。
レベルが上がれば、ヘルスポイントとスタミナポイントの上限が上がる。ボーナスポイントも与えられる。それを攻撃力や敏捷性みたいな各能力に割り振って、アバターの基礎値を上げていく。
クラスが高い人はたいていレベルも高い。逆に、低いクラスにレベルが高い人がいることもある。
というのも、バトルの鍵を握るのはユーザのテクニックだから。基礎値はそれほど大きな問題にならない。テクニックがないユーザは、いつまで経ってもクラスを上げられない。
「アタシ、今まで一度もハジかれてないの。連勝記録に傷を付けないでほしいわね」
「ボクたちもだよ。ほら」
ニコルが示すパラメータボックスを、アタシはチラッと見た。
コイツ、アタシよりもレベルが低い。そのくせに、アタシと同じハイエストクラスにいるなんて。つまり、相当テクニックがあるってこと? なんかムカつく。
ユーザが口元に着けるリップパッチが、表情筋の動きを認識する。それをアバターに反映する。
アタシは今、ムッとしてる。現実では、顔にも出てると思う。
でも、画面の中に反映できるのは、ハッキリした表情だけ。微妙な苛立ちの表情なんてリップパッチは認識できないから、アバターのアタシは、愛らしい顔に無表情を保っている。