下弦の月までに二日足りない夜、海精クーナは滅んだ。巫女ヒナは、愛するクーナの肉体を切り分けて土に埋めた。
 クーナの頭からはココヤシが生えた。心臓からはパンノキが生えた。性器からはバナナが生えた。尻尾からはカロイモが生えた。
 ヒナは村を去った。
 村は海精と巫女を失った。その代わりに、大地の恵みの豊穣を知った。名を持たなかった村は、フアフアと呼ばれるようになった。フアフアとは、ホヌアの言葉で「豊穣」を意味する。
 それが、神代の終わりに起こった伝説の顛末だった。