装備品の変更は特に必要ない。でも、ウィンドウショッピングは楽しい。アタシたちは、村に立ち並ぶ露店をひととおり冷やかして回った。
 ピアズの世界では、携帯できる回復アイテムはとにかく高い。安上がりでスピーディな回復には、人里で休憩するのがいちばんだ。食堂でのごはんや治療院での施術でステータスを回復できる。
 でも、放っておいても、一分ごとに最大ゲージの一パーセントが回復する。一日あたり四時間までしかプレーできないから、回復アイテムなしでも、どうにかやりくりできるゲームバランスだ。
 ニコルは食材を買い込んだ。
「アンタ、料理のスキルを持ってるの?」
「うん。けっこう何でも作れるよ」
「それ、便利!」
「でしょ」
 料理スキルは、旅先で、食堂と同じ効果を発揮する回復手段だ。回復アイテムと違って、食材はけっこう安い。料理が作れるなら、便利なことこの上ない。
「でも、アンタ、変わった趣味ね。普通は料理より戦闘スキルを優先させて習得するものでしょ?」
「ボクの場合、戦闘はラフがいるし。料理人としてお役に立つから、期待しといて」
「興味はあるわ」
 今、料理スキルは三十種類くらい配信されている。それぞれ、効果はいろいろだ。
 ケガや毒によって減らされるヘルスポイントと、移動やスキル発動によって消費するスタミナポイント。その二つを回復させることと食材を効率的に使うことと、うまく料理スキルを活用するためには、当然ながらたくさんのレシピを習得しておいたほうがいい。
「見て見て、シャリン。ボクのレシピコレクション!」
 ニコルのパラメータボックスには、ずらりと料理名が並んでる。配信されている料理スキルのすべてがそろっていた。
「物好きね」
 誉める代わりにそう言って、アタシたちは再び旅路に就いた。