翌日。俺は海岸から吹き抜けてくる風に肩を縮めながら、学校へと続く道を歩いていた。
十月も半ばになってくると朝は冷え込むことも多い。高齢者がいる家ではすでにストーブを炊きはじめているところもあるだろう。暖炉と繋がっている煙突から煙が出ている民家もちらほらと見えた。
「わあ、今日も可愛い!」
その途中で小学生たちが声を上げて群がっていた。
そこにはヤギ小屋があり、隣接している家の人が飼っている。それぞれのネームプレートを付けたヤギたちがエサ欲しさに顔を出していた。
そんな長閑すぎる光景を横目に、俺は昨日のことを思い返していた。
〝私、このランプの炎が消えると死ぬ病気にかかっているの〟
思わず受け取ってしまったランプは、自宅ではなく工房に置いた。気になって先ほど確認してきたけれど、炎は一夜経っても変わらない大きさで灯っていた。
ガラスとランプは密な関係にあるので、多少の知識は持っている。
オイルランプは基本的に油壷というものがあり、オイルが吸い上がっている芯に火をつけることによって炎がつく仕組みになっている。
茅森が持ってきたランプのオイルの容量はおよそ300ml。ざっと多めに計算しても燃焼時間は六時間が限界だ。
それなのに、昨日のタ方から燃え続けている彼女のランプは一体なんなのか。
炎が穏やかに灯り続けているだけではなく、オイルも減っていないように見えた。
ただのランプならばこんなことは普通じゃありえないことだけど……。
茅森の言うことを素直に信じろというほうが無理がある。