じじ様が亡くなったのはその翌年の冬のこと。
お墓にはあやかしたちが手を合わせにやってきて、皆、じじ様のおかげで人と関わるのも悪くないと思えたのだと語っていた。
そうして彼らの話を聞き、私は思ったのだ。
人と、神やあやかしたちがもっと上手に関われるようになったら素敵だなと。
以前であれば皆に溶け込めるようにと視えぬ振りをしていたが、すでに気味悪がられている身。
であれば、好きに振る舞ってしまえと開き直った私は、村の人があやかしに困らされればそれとなく仲裁に入り、あやかし側が人に脅かされることがあれば原因を見極めてできる限り双方の角が立たないように治めた。
時に頭頂部の皿にひびが入ってしまった河童を助けたり、時に人に追われて洞窟に隠れていた大猫を匿ったり。
村の女性が難産で苦しんでいた際は、あやかしたちの協力により安産の神【木花咲耶姫】様の力を借りたこともあった。
そうやって、心の赴くまま行動していくうちに、私に対する村の人たちの風当たりが柔らかくなり、神、あやかしのことで何かあれば頼られるようになって。
気付けば私は、近隣の村からも神、あやかしに関する困りごとの相談を請け負うようになったのだ。
そう、今までは遠くても近隣の村だ。
しかし、今回訪ねてきたという人は、京からこの伊勢国(いせのくに)まで遥々やって来たらしい。
私のことが、そんな遠くまで噂になって届いているのかと思うと驚きを隠せない。