結果は、一枚差で結崎さんの勝ち。
二位は俺、三位が彩月。

「また負けた……」

進藤が残った三枚を適当に机に置き、突っ伏した。

「結崎さんも悠吾くんも、意地悪だったよね」

そんな進藤を、彩月が励ます。
本当に優しくていい子だ。

それに比べ、俺は結崎さんにうるさく言われたくないからと、本気になりすぎた。

「……瀬戸さんとはいい勝負ができましたが……つまらなかった」

またか。

結崎さんは俺を見てくる。

「もう一度、違うゲームで」
「やりません。そもそも、何が目的なんですか」

ゲームをして、負ければ報酬がもらえるだなんて、おかしな話だ。

ただの負けず嫌いか?

「……悔しそうな顔が、見たいんです」
「は?」
「幸せそうにしている人の、苦しんでいる顔が好きなんです」

ちょっと何言ってるか分からない。

だけど、結崎さんは本気で言っているらしい。

「最低……」

彩月が小さな声でこぼした。

「私が悠吾くんといるところを見て、羨ましくてこんなことしたんだ?」

さっきまでとは違う、軽蔑するような目だ。
だが、結崎さんは表情を崩さない。

「違います。瀬戸さんという素敵な恋人がいながら、他にもお付き合いしている方がいるようなので……そんな人が不幸に染まったらどうなるのかなって」

その場が静寂に支配される。

待て。
つまり、彩月が浮気をしていると?

「……適当なこと、言わないでもらえますか」
「そ、そうだよ!私、悠吾くんとしか付き合ってないから!」

俺の言葉に、彩月が加えてくる。

「あまり大きな声で否定されると、図星だったのではと思ってしまいます」

結崎さんの声のトーンが低いように感じる。

俺たちが戸惑っているのに対して、結崎さんはトランプをかき集めている。

「結崎さん、どうしてそう思ったんですか?」
「答えたら、ゲームしてくれますか?」

この人はどれだけ俺が苦しむ姿を見たいんだ。

まあ、彩月が浮気をしていると思った根拠を聞くためには頷くしかないか。

「……わかりました。やりますから、教えてください」
「待って!」

折角人が覚悟して首を縦に振ったのに、彩月に遮られてしまった。
彩月は机を叩いて立ち上がった。

「悠吾くん、この人の言葉を信じるの?私が好きなのは、悠吾くんだけなんだよ?」

それはわかっているし、そうだと信じたい。
だけど、なんとなく、聞いておいて損はないと思ってしまった。