「一応、不具合が無いか調べておきます」

「また、持ってってしまうの?」

「些細なことでお嬢様が痛い思いをするのは、避けたいですからね」

「そういうの、過保護っていうのよ」

「おや。そんな事はありませんよ」


ルカは笑いながら、私の陶器の足を、大事そうに横へ除ける。そして、白い手袋をはめた手で、薄い肌色のラインを撫でた。


「私はただ純粋に、お嬢様が愛おしくて大切なだけです」


陶器の足はまるでビスクドールの足。

昼間の私の不恰好さを、綺麗な完成品にしてくれる大事なパーツ。

街の人達の間では、この両足と、私が人形師であることから《レディードール》なんて言ってるらしい――。


ルカが大切そうに飾り物の脚を扱うと、無いはずの足がギシギシ痛む気がした。でも今は、ルカの言葉に胸がギシギシと軋んでる。


「ルカは……私の足が大切?」

「それは勿論。ですが、一番はやはり……。たった今、申し上げたじゃないですか」

「……うん」

「珍しいですね。お嬢様がそんな寂しそうなお顔をするなんて」


私の心の内を見知ったのか、ルカは、フフッと嬉しそうに笑った。

そして、その表情のまま、小花が描かれたティーカップを私に渡し、やんわりと次を促してくる。

私はいつものように、それを数口飲んでカップを彼に返した。


まるで、何かの儀式のように繰り返されること。


「おいしい」


私がルカにかける言葉は、決して変わらない。


「ありがとうございます」


答えるルカの微笑みが安堵に満ちているのも、……やっぱり変わらなかった。