「お嬢様。速達が届きました。あと、ルカ。近すぎです」
アリアの声が突然降ってきたと思ったら、ルカの微笑みは封筒の向こうに消えてしまう。
目の前に突き出された封筒を反射的に受け取れば、次に現れたのはルカの無表情だった。
「アリア。もう少し空気を読んでください」
「無理です」
ルカの無表情に、アリアの無表情が答える。
それがなんだかおかしいのと、急に三人の距離が縮まった感じが嬉しくて、私は思わず吹き出してしまった。
「どなたからですか?」
「ブロンドの乙女のオーナーから、正式な修理依頼状が届いたわ。昨日のお詫びの手紙も入ってる……」
「どういうことでしょう」
ルカとアリアに迫られて、依頼状の文字と二人の顔を交互に見つつ……。
「今朝見たら、今度は本当に、頬にヒビが入っている……だって」
《Birthday》かもしれない。
三人同時に呟いて、そしてため息。
アリアが「屋敷にお呼びしますか?」と聞いてくる。来客を迎える準備をした方がいいのかどうか。
「こちらから会いに行くと、Mr.へ連絡をして」
「はい。すぐに」
アリアは頷き、踵を返す。
その後ろ姿を見送りながら、ルカが「仕方がないですね」と低い声で言った。
「昨日、あんなに牽制しておいたのに……台無しです」
「? 何?」
「いえ、何も。――私達も準備をしましょうか」
ルカは私の髪に唇を寄せて、微笑んだ。
END