――ひと際、強い風が吹いた。
ひざ掛けを飛ばされそうになって、慌てておさえる。
その時。
「シロツメクサが咲いたら、また花冠を作りましょうか――」
ふと、ルカが呟いて。
葉ずれの音で最後はほとんど聞こえなかったけれど、そう私には聞こえた。
「え……?」
俯いていた顔を上げると、いつの間にか私達の距離は無くなっていた。
額にあたたかなルカの唇。『おやすみのキス』
あっという間の出来事に、私の思考はしばらく停止。
「え……? ル……カ?」
「『おやすみのキス』があれば、私も睡眠不足など二度と起こさないかもしれないですね」
「ルカが私にしてどうするの……?」
「二人でお互いキスしていたじゃないですか」
「そうだったっけ? ……いや、違うでしょ! 今は夜じゃないし!」
「では、また夜に」
人差し指を自分の唇にあて、ルカはにっこりと微笑む。
瞬間、鳥肌が立ち、血液が沸騰したんじゃないかと思うほど全身が熱くなった。また数秒、思考が停止する。
――ルカが。あんなにお願いしても知らん顔だった、ルカが。
私にキスを……した……。