アリアが仮面の頬をそっと撫でる。それから、複雑な表情のルカを横目に箱を閉じた。
「ルカのお嬢様への執着は気持ち悪いですが、私はそれを呪いや悪意だとは思いません」
「え……。気持ち悪い、ですか……」
「はい。少し歪んでいるかと。だけどお嬢様が嫌がっていないなら、別に問題はないような……。ルカの本心を知ったら気持ち悪がるかもしれないですが」
「あの、そんなに気持ち悪く見えます?」
無表情で言われると、余計に胸に刺さる――。
ルカは短いため息をついた。
「私も、どうしてこの姿で今もいられるのか不思議です。《Birthdayドール》なのに、お嬢様は気付いていないみたいですし」
袖をまくり長めの手袋を外すアリア。球体関節はドールそのままだが、肌は陶器ではなく人肌のようで。
人間にもなれず人形にも戻れない――アリアはそう呟いた。