『リルのおうちには、オバケがいるの』

――それは困りましたね。絵本のように、魔法使いに助けてもらいましょうか

『ううん。それはダメなの』

――どうしてですか? お嬢様は、オバケがいない方が怖くなくていいでしょう?

『そうだけど。……でも、いっしょにきえちゃったら、ダメなんだもん』


フェリルが言っていた“オバケ”は、ルカのこと。

ハッキリと、誰がどのような存在であるか理解できなくとも、フェリルはそばにいるルカの正体を見抜いていて、そして消えないでほしいと思っていた。

長い時間をかけ、呪い――悪霊になってしまったルカを、人々は恐れたり、面白おかしく扱ってきたが、フェリルのように純粋な好意で引き止めてくれた者はいなかった。

それに気付いた時、ルカの心は大きく揺さぶられて。

フェリルを一人にはしない。自分がフェリルを守ろう。そう決めた。


「ですが私は、やはり悪霊のままなのです。こんなに愛しているのに、いつかお嬢様を殺してしまうかもしれない。さて、呪いにかかっているのは一体どちらなのか……」