幼いフェリルは、自分の両足を失ったことを悲しむよりも、『わたしが、じいやを、ころしちゃった』と泣き続け、謝り続けた。

お前は悪くないんだよ、と優しい言葉の裏で醜く笑っている男。その時ルカは、生きている時にも感じなかった気持ちを抱き――。


「それでその姿に?」

「旦那様が後任の執事を探し始めたので。いいタイミングでした」


ルカは燕尾服の裾をちょっと持ち上げて笑う。


「顔……先代は気付かなかったんですか?」

「えぇ。本当に……残念な方でしたよ。私が殺しに来てはじめて分かったんです」


娘がよく懐いている執事の青年の正体を知った時、父親はまず必死に命乞いをした。


「人を呪えば、その報いは必ず受けなければならない。そんなことも知らずに……。バカな人間です」


主人の最期の言葉を思い出す。ルカの悲しそうな微笑みに、アリアは首を傾げる。


「あの方は、地獄に行っても誰かを呪い続けるのでしょうね」


――死にゆく中でも、娘が苦しみ続けることを願った父親だった……。


「ルカはお嬢様を呪い殺す悪霊……」

「お嬢様が私を見つけなかったら、そうでした」

「え?」

「今は……。そんなことはしたくない」