「自分で言うのもなんですが、この仮面は“呪いの仮面”だそうで」
「穏やかではありませんね」
「病弱で幸薄く、猟奇殺人の被害者。遺されたのは首だけ……そんな最期だったのに死に顔は穏やか――。売買するための謳い文句にはもってつけだったんじゃないですか? まさか、自分の死に顔がオークションで晒され世界中を旅するとは思いませんでしたよ」
「その恨みから悪霊に?」
「自分を呪って死んだわけでも、誰かを呪うために死んだわけでもありません。だけど、私にそうであれという人間が多かった。その結果、この有り様です」
ルカは仮面の唇をなぞる。何故こうなってしまったのか、本当のところ、自分でもよく分からないままだ。
「先代は嬉々として私を迎え入れました。それはもう大金を叩いて」
「やっと手に入れた」「これでやっと……」と、書斎で狂い笑うフェリルの父親の顔を、ルカは今も忘れていない。
嫉妬や恨みに歪む人間の顔は何度も見てきたが、あそこまで酷い者はいなかった――。