「これは、ルカのものですか?」
アリアの再びの問いかけに、ルカは「はい」と返した。
「綺麗ですね。――“美しく儚い少年の死顔”」
箱の蓋の裏には銀のプレートがついていた。そこに彫られた文字をアリアは読み上げる。
「美しくなんかない。気持ち悪いでしょう?」
「“自分の死に顔”だからそう思うのですか?」
「やはり気付いていましたか」
「ルカがここに来た時から、私はあなたが《悪霊》だと知っていました」
「ではお互い様ですね。私はアリアが《Birthdayドール》だと気付いていましたから。一緒に仕事をする上では何も不都合は生じませんし、身の上話をする必要もありませんでしたものね」
「この屋敷、まともな人間はフェリルお嬢様だけです」
頷くアリアにルカが苦笑した。
「確かに。私達はもちろん、先代も先々代も……まともな人間とは言えません」
「ルカはどうしてこの屋敷に?」
「悪霊が執事だなんて……と思いますか」
「仮面のまま、ここで寝ていれば楽だったのに」
アリアはいつもどおり無表情だったが、何故か口調が落胆しているように聞こえ、ルカは思わず吹き出した。フェリルのそばに悪霊がいるのが少々納得いかないらしい。