ルカは手袋を外すと、真白な唇を人差し指でなぞった。次に、フェリルの艷やかな唇を思い出しながら、自分の唇をゆっくりとなぞる。

はあっ……と、ルカからウットリとしたため息が漏れた。


「それは、ルカのものですか?」


唐突にかけられた声に、ルカは視線を向けた。


「覗き見ですか? アリア」

「ドアが少し開いていました。これはルカの不注意です。私は自分から開けていません」

「ああ……」

「それとも、私が柱の影からルカを覗いていたのを知っていて、わざと開けておいたと?」

「なんだ。やっぱり覗いていたんじゃないですか」


肩をすくめて笑うルカを、アリアは無言で見つめる。結局、誘導されたのかどうか分からない。

――フェリルならば問い詰めただろうが、アリアはそこまでするほど興味がないので、ただじっとルカを見る。


「どうぞ。そこにずっと立たれていても困りますので。ドアは閉めてくださいね」


隙間からひょっこりと首だけ出していたアリアは、言葉に頷いた。