屋敷内が寝静まる頃。

日光を拒絶する書斎の、重いカーテンが開いた。

今宵は満月。明るく強い月光が、窓枠の十字を絨毯の上にくっきりと描く。

こんなに清々しい満月の夜は、一年の内でもそう無い。月光浴だといわんばかりに、ルカは窓辺で目を閉じた――。

そうして満月夜を楽しんだ後、本棚へ。上段へ移動させておいた箱を取る。

――まさかフェリルが、自分の留守中に忍び込み、中を見ようとするとは……。


「まぁ、取れたとしても、これが無ければ開けられないんですけどね」


クスリと笑い、ルカは燕尾服の内ポケットから細く小さな鍵を取り出し、箱を開けた。

サテン地の薄いクッションに守られている、石膏で作られた仮面――デスマスク。

一般的には穏やかな死に顔というのだろうか。端正な顔立ちの少年のそれ。