『リルのおうちには、オバケがいるの』
――子供の頃、フェリルは書斎が苦手だった。
大きな窓があるのに、いつもカーテンが閉められ真っ暗。机の上にあるランプだけがぼんやりと光っている。
頼りない明かりの中で、父は何かに取り憑かれたようにペンを走らせたり、作業をしたり……。
異様な雰囲気を醸し出す部屋は、呼ばれてもあまり入りたくない、二階にあるのに地下にあるような部屋だった。それこそ、幽霊がたくさん閉じ込められているんじゃないかと思うくらい気味の悪い場所。
――ところが。ある時を境に何かが変わった。
なんだろうか。
今でもよく分からない。
ただ言えるのは、あんなに恐ろしかった書斎が興味を惹かれる場所になったということ。
あの部屋は禍々しいもので溢れているけれど、それを消してはいけないと思っていること――。