何を言い出すのかと思えば……。
見上げれば、ルカの厳しい表情。フェリルは、ため息をつき苦笑した。
「依頼でしょ」
「はい。お嬢様はそれだけでしょうね。しかし、世の人間……特に男性は違うのですよ。滅多に姿を現さない、アッシュベリーの若く美しい人形師《レディードール》。なんとか機会をつくり、お嬢様に近づきたいのです」
「私の足は見世物じゃないのに」
「お嬢様の足は美術館で展示してもいいくらい美しいです。……いや、そういう意味じゃなくてですね」
ルカはフェリルから視線を外し、またコホンと咳を。
分からないならばそれで結構です、と呟く。
「とにかく。今回は私がまず様子を見てきますから」
「えぇ〜……街に行くついでにショッピングが出来ると思ったのに」
フェリルが屋敷の外へ出ることは、ほとんどない。出る必要も特にないからだ。なにもかも、ルカとメイドのアリアがいれば十分だし、外の空気が吸いたければ庭を散歩すればいいだけ。フェリルはそれで満足している。
とはいえ、たまに街を見て回りたい時はあるわけで。特に今頃は――。
「では、来週末に時間を作りましょう。クリスマスマーケットも回れますし」
「いいのっ⁉」
「ですから、本日はお屋敷で大人しくお過ごしくださいませ」
一瞬で心をクリスマスマーケットに奪われ、目をキラキラ輝かせるフェリルを見て、ルカは唇の端をそっと引き上げた。