偽薬《プラセボ》だって、言葉と優しい微笑みがあれば本物になる。
でも、今の私は幼い頃と少し気持ちが違うから、そこに意味が欲しい。
どうして偽物を本物にしてくれるのか、その答えに自分の期待を沢山混ぜて。
《ルカの愛情は、どんな“愛”なの?》
……どうか、私と同じであって欲しい。
私がいつも同じことを繰り返すのは、ルカの気持ちが見えないからだった。
なぜ、彼はこうするのだろう……。
陶器の足を大事に、毎晩手入れしてくれる。
車椅子も丁寧に部屋の隅に片づけてくれる。
そして、安定剤代わりのお茶を淹れてくれる。
私はどこにも行かないよ?
ルカのそばにいたいから。
ルカが居てくれればそれでいいの。
だから、いいのに。そこまでしなくても。
ルカはどうして……?
立つこともままならない、壊れやすい陶器の足は、ルカしか扱えない。
ベッドに入ると、自分では決して届かない場所に置かれる車椅子。
深い眠りに連れて行く、本物の薬の入ったお茶。
ルカの本当の気持ちが知りたくて。
私は毎晩同じことを繰り返す。
分からないから、いつまでも繰り返される。
月が笑うのも無理はない。
今日の月はチェシャ猫みたいに。
「まだ分からないのかい?」って、
私を嘲笑《わら》ってる……。