優しく笑うくせに執事の顔で拒絶して、軽く触れるのに深く触れない。

私にとっては、それはずるい残酷な優しさだ。


(もっとそばにいさせて? ルカ)


こんなに願っているのに。なぜ聞き入れてくれないのだろう。

どうして、こんなことを繰り返すのだろう。



私は眠りにつく。

一度眠れば、朝まで目覚めない。ルカがまた、あの穏やかな微笑みで私を起こしに来るまで、私は一瞬の闇夜を過ごすだけ。

良い夢なんて見たこともない。

『おやすみなさい、お嬢様。良い夢を』

そもそも、あんなことを言っておいて、私に夢を見せないようにしているのは、……ルカ。あなたじゃないの。


不恰好な人形みたいな私。

綺麗なビスクドールの足が無ければ、完成された姿には見えない。車椅子が無ければどこにも行けないし、何にも出来ない。

だけど、不自由を感じたことなんて一度もなかった。理不尽も関係なかった。

ルカが居たからそう思えるんだと思う。



だから。だから私は。

ここからひとりで、どこかへ――。

なんて思ったこと、ないのに。

ルカのそばを離れるとか考えられないのに。

それなのに、ルカはどうしていつもあんな風に言うの?


『勝手にどこかへ行ってはいけませんよ?』