泣きじゃくる夜が7日間くらいは続いただろうか。
とはいえ8日目以降も悲しみが収まるわけでもなく。
何より悲しいのは、振られてからも毎日嫌でも夏生と顔を合わせなければならなかったことだ。
夏生はこれまで通り、何事もなかったように英語の授業でペアを組んでくれた。
でも私は普通には振る舞えない。
どうしても不自然な態度で接することになる。
"What did you do last Sunday?"
脳天気に(かどうかはわからないが)プリント通りの英語を読み上げる夏生を、上目遣いで睨みながら答える。
"......Nothing."
不自然?
いや、不自然という言葉は当てはまらないだろう。
むしろ、私の態度は「逆恨み」みたいなそれだった。高校生らしい幼稚さ。
(私と花火を見に行ったあれは、何だったっていうの?)
今にもそんな怒りの本音をぶつけてしまいかねない視線で、夏生の後ろ姿を何度にらみつけたことだろう?
月並みな表現だが甘く・酸っぱい私の高校生最初で最後の恋は儚く散り、結局リア充という名の勲章を胸に付けることは一度もないままに、高校を卒業し、ぱっとしない私立大学に入学した。
高校生活なんて振り返れば一刹那の思い出であり、もう2度とあの恋については思い出さないであろうと思われた。
というよりも思い出さなくて済むように意図的に自ら多忙な時の渦の中へ足を踏み入れていたとでもいえばいいだろうか?
細いカラーペンで手帳に分刻みにスケジュールを書き込む日々の中で、次第に”品川夏生との思い出”はどんどん”過去”の一つへと埋もれつつあった。
「9:00~ 社会学基礎」
「10:30~ 大学第一生協アルバイト」
「12:10~ 京子さんとランチ」
「13:30~ パン屋アルバイト」
「16:00~ バイトの面接」
「18:30~ コンパ ○○駅集合」
……びっしりと埋め尽くされた色とりどりのペン跡たちの主張。
どれもこれも初体験の18歳女子にとっては魅力的で、苦い過去を振り返る一瞬の隙間さえない。
好きだったバンドのことさえ、この時はもう忘れていたくらいだ。
これこそが、私のもくろみであり、それは大成功に収まっていた。
はずだった。
とはいえ8日目以降も悲しみが収まるわけでもなく。
何より悲しいのは、振られてからも毎日嫌でも夏生と顔を合わせなければならなかったことだ。
夏生はこれまで通り、何事もなかったように英語の授業でペアを組んでくれた。
でも私は普通には振る舞えない。
どうしても不自然な態度で接することになる。
"What did you do last Sunday?"
脳天気に(かどうかはわからないが)プリント通りの英語を読み上げる夏生を、上目遣いで睨みながら答える。
"......Nothing."
不自然?
いや、不自然という言葉は当てはまらないだろう。
むしろ、私の態度は「逆恨み」みたいなそれだった。高校生らしい幼稚さ。
(私と花火を見に行ったあれは、何だったっていうの?)
今にもそんな怒りの本音をぶつけてしまいかねない視線で、夏生の後ろ姿を何度にらみつけたことだろう?
月並みな表現だが甘く・酸っぱい私の高校生最初で最後の恋は儚く散り、結局リア充という名の勲章を胸に付けることは一度もないままに、高校を卒業し、ぱっとしない私立大学に入学した。
高校生活なんて振り返れば一刹那の思い出であり、もう2度とあの恋については思い出さないであろうと思われた。
というよりも思い出さなくて済むように意図的に自ら多忙な時の渦の中へ足を踏み入れていたとでもいえばいいだろうか?
細いカラーペンで手帳に分刻みにスケジュールを書き込む日々の中で、次第に”品川夏生との思い出”はどんどん”過去”の一つへと埋もれつつあった。
「9:00~ 社会学基礎」
「10:30~ 大学第一生協アルバイト」
「12:10~ 京子さんとランチ」
「13:30~ パン屋アルバイト」
「16:00~ バイトの面接」
「18:30~ コンパ ○○駅集合」
……びっしりと埋め尽くされた色とりどりのペン跡たちの主張。
どれもこれも初体験の18歳女子にとっては魅力的で、苦い過去を振り返る一瞬の隙間さえない。
好きだったバンドのことさえ、この時はもう忘れていたくらいだ。
これこそが、私のもくろみであり、それは大成功に収まっていた。
はずだった。