しかし、結論から言えば、私は「リア充」にはなることができなかった。
 花火大会をすっぽかされたわけではない。
 ちゃんと夏生は花火大会に浴衣姿で来てくれたし、私の浴衣姿を褒めてくれた。二人きりの花火大会で、邪魔者も現れなかった。

《今日は楽しかったね!》

 だというのに。

《今度は、一緒に水族館行きたいな!》

 だというのに。

《それから、秋の音楽フェスも行こうよ!》

 だというのに――。

 那月から夏生へ。
 一方的に、立て続けに送ったメッセージは、既読になったまま1週間放置された。

 何かが、おかしい。
 嫌な予感がする。

 7日目の夜。
 私が受けとったメッセージには、



《ごめん、それは行けない》



 どうして?
 震える指で画面をスワイプする。



《彼女ができたから、他の女の子とは遊びに行けなくなっちゃった。ごめんね》



――彼女。
――他の女の子。

 視界が真っ暗になる、とはこのことを言うんだな、と自虐気味に思った。
 心ははっきりとショックを覚えているのに、頭のどこかが冷めていた。

〈こんなにうまくいくはずがないって思った〉

〈私には不釣り合いな男の子だったんだから、当然だよね〉

 必死に押し寄せる悲しみの津波を、小さな両手で押し返そうとする、そんな抵抗はむろん無駄だった。