あのときのメッセージでちゃんと傷ついたから、だから今、もう洋介のことは忘れて前を向けているのに。
今更私に、いったいなんの用があるというのだ。
私ならもうほっといてくれて大丈夫だよ。
だってもう、本当の自分を曝け出せる場所を見つけられたから。
〇
次の日。会社に着くと、なんとデスクにしまっておいたノートパソコンが無くなっていた。
昨日たしかに鍵のかかる引き出しにしまったはずなのに。
「ど、どうして……」
「おはようございまーす」
青ざめた私の隣に、桃野さんが眠い目をこすりながらやってきた。
ただごとじゃない空気を感じ取ったのか、桃野さんはすぐに私の顔を覗きこんで、目の前で視界を遮るように手を振った。
「おーい、花井さん。どうしたんですか? 顔色ナスみたいになってますよ」
「ぱ、ぱ、パソコンが無くなった……。昨日たしかにここにしまったのに……」
「えっ、なにそれ嫌がらせか泥棒じゃないですか!」
「嫌がらせ?」
そうか、これはたんにパソコンを失くしただけじゃなく、嫌がらせか盗難の可能性もあるのか。
どうしよう、いったい誰が?
もし社外の人間に盗まれたのだとしたらどうしよう。どちらにせよ、すぐに人事に報告しなければ。
私のせいで会社の情報が外に漏洩したら大事故だ。冷たい汗が額を伝って、私の全身を強張らせる。
「ちょっと私、会議室全部見て探してきますっ……」
「うん、そうしなよ。朝礼は欠席するって言っておくから」
桃野さんもさすがに焦った様子で、私を見送ってくれた。
もしかしたら習慣でデスクにしまったと思い込んでいるだけかもしれない。
私は、昨日使用した会議室を手当たり次第まわることにした。
階段を使って、上の階に移動しようとしたそのとき、丁度通り道にあるエレベーターの扉が開いて、出社してきた草壁さんと鉢合わせしてしまった。
「花井どうした、またゾンビ顔になってんぞ……」
「ごめんなさい、今草壁さんにかまってるヒマないんですっ」
「はあ?」
草壁さんは私の言葉に、訝し気に眉を顰めていたが、私はそれをスルーして会議室へと向かう。
来客で使ったA会議室、部署ミーティングで使ったC会議室、カフェ形式のオープンな会議室。
全部まわったけれど見つからない……。
あるわけないと思いつつ、私は資料がまとまっている倉庫室に向かった。
今更私に、いったいなんの用があるというのだ。
私ならもうほっといてくれて大丈夫だよ。
だってもう、本当の自分を曝け出せる場所を見つけられたから。
〇
次の日。会社に着くと、なんとデスクにしまっておいたノートパソコンが無くなっていた。
昨日たしかに鍵のかかる引き出しにしまったはずなのに。
「ど、どうして……」
「おはようございまーす」
青ざめた私の隣に、桃野さんが眠い目をこすりながらやってきた。
ただごとじゃない空気を感じ取ったのか、桃野さんはすぐに私の顔を覗きこんで、目の前で視界を遮るように手を振った。
「おーい、花井さん。どうしたんですか? 顔色ナスみたいになってますよ」
「ぱ、ぱ、パソコンが無くなった……。昨日たしかにここにしまったのに……」
「えっ、なにそれ嫌がらせか泥棒じゃないですか!」
「嫌がらせ?」
そうか、これはたんにパソコンを失くしただけじゃなく、嫌がらせか盗難の可能性もあるのか。
どうしよう、いったい誰が?
もし社外の人間に盗まれたのだとしたらどうしよう。どちらにせよ、すぐに人事に報告しなければ。
私のせいで会社の情報が外に漏洩したら大事故だ。冷たい汗が額を伝って、私の全身を強張らせる。
「ちょっと私、会議室全部見て探してきますっ……」
「うん、そうしなよ。朝礼は欠席するって言っておくから」
桃野さんもさすがに焦った様子で、私を見送ってくれた。
もしかしたら習慣でデスクにしまったと思い込んでいるだけかもしれない。
私は、昨日使用した会議室を手当たり次第まわることにした。
階段を使って、上の階に移動しようとしたそのとき、丁度通り道にあるエレベーターの扉が開いて、出社してきた草壁さんと鉢合わせしてしまった。
「花井どうした、またゾンビ顔になってんぞ……」
「ごめんなさい、今草壁さんにかまってるヒマないんですっ」
「はあ?」
草壁さんは私の言葉に、訝し気に眉を顰めていたが、私はそれをスルーして会議室へと向かう。
来客で使ったA会議室、部署ミーティングで使ったC会議室、カフェ形式のオープンな会議室。
全部まわったけれど見つからない……。
あるわけないと思いつつ、私は資料がまとまっている倉庫室に向かった。