洋介は明るくて、リーダー気質で、強引なところもあるけれどぐいぐい引っ張ってくれて、私とは真逆の人間だった。
「花井はどう思う?」
「あ、えっと……、私は葛谷君の意見に賛成。インパクトあるテーマで他のグループとも被らなそうだし」
引っ込み思案でなかなか自分の意見を言えない私に、いつも『花井はどう思う?』って聞いてくれるところが優しいなって思っていた。
洋介はわりと最初から好印象で、仲良くなるにはそう時間はかからなかった。
そのうちふたりで飲むようになって、配属先が同じだと決まってからどちらからともなく付き合うようになった。
リクルートスーツで会うんじゃなくて、お互いだんだんと社会人らしい服装になって、違う部署ながら金曜は一緒にお酒を飲んでお互いを励ましあっていた。
行きつけだったのは、彼の家の近くにある、串揚げが有名な居酒屋だ。
本当はひとりで軽く三十本は食べたいところを、私はいつも我慢していたんだ。
「ていうか三年目の葛西さん、よくあんなんでうちの会社受かったよな。全然仕事できねぇの」
「葛西さん……聞いたことないや」
もともとプライドが高かった洋介だけど、入社して一年経った頃からだんだん口調が変わってきた。
私は串揚げを食べながら、否定も肯定もしない言葉を選んで、相槌を打つだけの人形になっていた。
洋介が批判する“要領が悪い人”に、私も該当する人間だから、洋介の話は自分のことも否定されているようで少し辛い。
そんなとき、店員さんがラストオーダーを聞きにテーブルにやってきた。
うわ、もう食事ラストオーダーなんだ!
洋介が隙を与えてくれないから全然注文できなかった……。
せめてここの名物の肉吸いだけでも締めに食べたい!
「あ、もういい。お会計で」
そんな私の希望なんて一切聞かずに、洋介はお会計を依頼した。
いつからだろう。洋介が『花井はどう思ってるの?』と、あの頃みたいに聞いてくれなくなったのは。
長く付き合うほど男性は安心して、女性は不安になるものだって、誰かがどっかで言っていた気がする。
それは本当にその通りで、洋介は長く付き合うほど自分の話しかしなくなった。
気を許してくれているんだと、私は何度も自分に言い聞かせていた。
仕方ない。この空腹はこのあとひとりでラーメンを食べて落ち着けよう。
「花井はどう思う?」
「あ、えっと……、私は葛谷君の意見に賛成。インパクトあるテーマで他のグループとも被らなそうだし」
引っ込み思案でなかなか自分の意見を言えない私に、いつも『花井はどう思う?』って聞いてくれるところが優しいなって思っていた。
洋介はわりと最初から好印象で、仲良くなるにはそう時間はかからなかった。
そのうちふたりで飲むようになって、配属先が同じだと決まってからどちらからともなく付き合うようになった。
リクルートスーツで会うんじゃなくて、お互いだんだんと社会人らしい服装になって、違う部署ながら金曜は一緒にお酒を飲んでお互いを励ましあっていた。
行きつけだったのは、彼の家の近くにある、串揚げが有名な居酒屋だ。
本当はひとりで軽く三十本は食べたいところを、私はいつも我慢していたんだ。
「ていうか三年目の葛西さん、よくあんなんでうちの会社受かったよな。全然仕事できねぇの」
「葛西さん……聞いたことないや」
もともとプライドが高かった洋介だけど、入社して一年経った頃からだんだん口調が変わってきた。
私は串揚げを食べながら、否定も肯定もしない言葉を選んで、相槌を打つだけの人形になっていた。
洋介が批判する“要領が悪い人”に、私も該当する人間だから、洋介の話は自分のことも否定されているようで少し辛い。
そんなとき、店員さんがラストオーダーを聞きにテーブルにやってきた。
うわ、もう食事ラストオーダーなんだ!
洋介が隙を与えてくれないから全然注文できなかった……。
せめてここの名物の肉吸いだけでも締めに食べたい!
「あ、もういい。お会計で」
そんな私の希望なんて一切聞かずに、洋介はお会計を依頼した。
いつからだろう。洋介が『花井はどう思ってるの?』と、あの頃みたいに聞いてくれなくなったのは。
長く付き合うほど男性は安心して、女性は不安になるものだって、誰かがどっかで言っていた気がする。
それは本当にその通りで、洋介は長く付き合うほど自分の話しかしなくなった。
気を許してくれているんだと、私は何度も自分に言い聞かせていた。
仕方ない。この空腹はこのあとひとりでラーメンを食べて落ち着けよう。