細い糸を引いた白いチーズがプツンと切れるまで待って、具が零れ落ちないように軽く折ってから口に運ぶ。
すると、口の中にハーブの香りとソーセージのジューシーな油、ピーマンの歯ごたえ、チーズの濃厚な味わいが一気に広がった。
美味しすぎて昇天しそうなところに、さっきのモヒートを流し込む。
爽やかな味わいが喉を通り過ぎて、より一層ピザが美味しく感じた。なんて最高の相性なんだ。
いつもピザには甘い炭酸飲料水を合わせていたけど、この組み合わせもすごくいい。
キラキラした目で草壁さんを見つめると、「ほんと美味そうに食うな」とぼそっとつぶやかれた。
「うう……、仕事の疲れが取れていきます……」
「花井、それだけじゃ足りないだろ。もう一枚食べるか?」
「あと二枚追加でオーダーしていいですか。あとアルコール入りのモヒートも飲みたくて……」
「了解」
草壁さんは、私の大食いになにも突っ込まずに、注文を受け入れてくれる。草壁さんに限らずここのお客さんは皆そうだ。
『まだ食べるの?』と言われることがなによりも嫌な私にとって、それは本当にありがたいことで。
美味しさに感動しながら目の前にあるピザをたいらげると、萼さんからの視線を感じた。
「菜乃ちゃんの食べっぷり見てると元気出るわ」
「えっ、ほんとですか」
「うん、動画配信とかしたら視聴者つきそう、三人くらい」
「身内しか観てないじゃないですか」
なんて冗談を言い合っていると、テーブルに置いてあった自分のスマホが震えた。
画面には、目を疑うような名前が表示されていた。
【葛谷洋介】
その名前は、もうすっかり頭の中にはない名前だった。
スマホを見ながら固まっていると、萼さんが「取らないの?」と聞いてきた。
私はスマホを鞄にしまって、「仕事の電話でした」とへらっと笑って答えた。
こんな時間に、今更なんの用があるのだろう……。
せっかく美味しいご飯食べていたのに気分が台無しだ。
私は、草壁さんが出してくれたアルコール入りのモヒートを飲みながら、洋介となんで付き合ったのかを思い出していた。
〇
洋介と出会ったのは、今から三年前の内定者の研修の時だった。
まだ配属先も分からずグループ分けされたメンバーの中に、洋介がいたんだ。
すると、口の中にハーブの香りとソーセージのジューシーな油、ピーマンの歯ごたえ、チーズの濃厚な味わいが一気に広がった。
美味しすぎて昇天しそうなところに、さっきのモヒートを流し込む。
爽やかな味わいが喉を通り過ぎて、より一層ピザが美味しく感じた。なんて最高の相性なんだ。
いつもピザには甘い炭酸飲料水を合わせていたけど、この組み合わせもすごくいい。
キラキラした目で草壁さんを見つめると、「ほんと美味そうに食うな」とぼそっとつぶやかれた。
「うう……、仕事の疲れが取れていきます……」
「花井、それだけじゃ足りないだろ。もう一枚食べるか?」
「あと二枚追加でオーダーしていいですか。あとアルコール入りのモヒートも飲みたくて……」
「了解」
草壁さんは、私の大食いになにも突っ込まずに、注文を受け入れてくれる。草壁さんに限らずここのお客さんは皆そうだ。
『まだ食べるの?』と言われることがなによりも嫌な私にとって、それは本当にありがたいことで。
美味しさに感動しながら目の前にあるピザをたいらげると、萼さんからの視線を感じた。
「菜乃ちゃんの食べっぷり見てると元気出るわ」
「えっ、ほんとですか」
「うん、動画配信とかしたら視聴者つきそう、三人くらい」
「身内しか観てないじゃないですか」
なんて冗談を言い合っていると、テーブルに置いてあった自分のスマホが震えた。
画面には、目を疑うような名前が表示されていた。
【葛谷洋介】
その名前は、もうすっかり頭の中にはない名前だった。
スマホを見ながら固まっていると、萼さんが「取らないの?」と聞いてきた。
私はスマホを鞄にしまって、「仕事の電話でした」とへらっと笑って答えた。
こんな時間に、今更なんの用があるのだろう……。
せっかく美味しいご飯食べていたのに気分が台無しだ。
私は、草壁さんが出してくれたアルコール入りのモヒートを飲みながら、洋介となんで付き合ったのかを思い出していた。
〇
洋介と出会ったのは、今から三年前の内定者の研修の時だった。
まだ配属先も分からずグループ分けされたメンバーの中に、洋介がいたんだ。