震えた声で現状を説明すると、草壁さんは「は?」と言って一瞬眉を顰めたが、すぐに私の画面に真剣に向き合ってくれた。
「見せてみろ」
私は自分の椅子を引いて、草壁さんに自分のパソコン画面を見てもらった。
草壁さんは冷静な表情のまま問いかける。
「資料名なんて名前」
「ま、丸谷食品様ソイミートコラボレシピ提案書0902です……。削除リストにも、検索かけても出てこなくて……。ついさっきまで更新してたんですけど」
泣きそうな声になっている私を見て、草壁さんは低い声で「大丈夫だ」と言った。
その横顔があまりに真剣で頼もしくて、私は草壁さんの名前を叫びながら抱き着きたい気持ちに駆られた。
「削除したファイルが直近であれば、まだハードディスクに残ってるから、復元ソフトを使えばこんなものすぐ戻せる」
「復元ソフト……」
「こんなの全然大丈夫だよ。ちょっと待ってろ」
そう言って、草壁さんは復元ソフトとやらをつかってデータを戻してくれた。
あまりに簡単に戻してくれたので、私は感動して言葉がすぐに出てこなかった。
最終更新の状態で保存されたファイルは再び開かれたのを見て、安心してうっすら涙が出てしまう。
私は草壁さんを見て、しっかり頭を下げた。
「お忙しいのに、しかも他部署なのにすみません。本当にありがとうございます……」
草壁さんが最高技術責任者である理由がよく分かる。
「どんなときも慌てなくて、絶対に問題を解決してくれる」って、システム事業部の部下に言われてたのを聞いたことがある。
「あとで社食五人前食ってるところ見せてくれよ」
「はい……、何人前でもフードファイト披露して見せます……」
「はは、楽しみだな」
少しだけ笑って、草壁さんは颯爽と去っていってしまった。
そんな一連をずっと見ていた桃野さんは、目の中にハートが入っているんじゃないかというくらいうっとりした表情になっている。
「草壁さん、イケメン過ぎる……。なんですか今の。私もパソコンぶっ壊そうかな」
桃野さんの真剣なつぶやきに乾いた笑みをこぼしながら、私は心の中で草壁さんに何十回もお礼を伝えた。
たしかにこれは、うっかりしていたら惚れてしまいそうなシチュエーションだ。
私は強く自分の頬を叩いて、目先のプレゼンと向き合った。
「見せてみろ」
私は自分の椅子を引いて、草壁さんに自分のパソコン画面を見てもらった。
草壁さんは冷静な表情のまま問いかける。
「資料名なんて名前」
「ま、丸谷食品様ソイミートコラボレシピ提案書0902です……。削除リストにも、検索かけても出てこなくて……。ついさっきまで更新してたんですけど」
泣きそうな声になっている私を見て、草壁さんは低い声で「大丈夫だ」と言った。
その横顔があまりに真剣で頼もしくて、私は草壁さんの名前を叫びながら抱き着きたい気持ちに駆られた。
「削除したファイルが直近であれば、まだハードディスクに残ってるから、復元ソフトを使えばこんなものすぐ戻せる」
「復元ソフト……」
「こんなの全然大丈夫だよ。ちょっと待ってろ」
そう言って、草壁さんは復元ソフトとやらをつかってデータを戻してくれた。
あまりに簡単に戻してくれたので、私は感動して言葉がすぐに出てこなかった。
最終更新の状態で保存されたファイルは再び開かれたのを見て、安心してうっすら涙が出てしまう。
私は草壁さんを見て、しっかり頭を下げた。
「お忙しいのに、しかも他部署なのにすみません。本当にありがとうございます……」
草壁さんが最高技術責任者である理由がよく分かる。
「どんなときも慌てなくて、絶対に問題を解決してくれる」って、システム事業部の部下に言われてたのを聞いたことがある。
「あとで社食五人前食ってるところ見せてくれよ」
「はい……、何人前でもフードファイト披露して見せます……」
「はは、楽しみだな」
少しだけ笑って、草壁さんは颯爽と去っていってしまった。
そんな一連をずっと見ていた桃野さんは、目の中にハートが入っているんじゃないかというくらいうっとりした表情になっている。
「草壁さん、イケメン過ぎる……。なんですか今の。私もパソコンぶっ壊そうかな」
桃野さんの真剣なつぶやきに乾いた笑みをこぼしながら、私は心の中で草壁さんに何十回もお礼を伝えた。
たしかにこれは、うっかりしていたら惚れてしまいそうなシチュエーションだ。
私は強く自分の頬を叩いて、目先のプレゼンと向き合った。