青々とした新鮮なバジルを山盛りミキサーに押し込み、アンチョビ、にんにく、粉チーズ、オリーブオイル、それからカシューナッツを追加して、草壁さんはミキサーのスイッチをオンにした。
「カシューナッツ、加えるんですね。これ、作ってるのって、ジェノベーゼ……?的なソースですよね?」
「そうだ。本当は松の実が基本だが、俺はカシューナッツの方がまろやかなコクが出て好きなんだ」
 豪快な音とともに、みるみるうちにフレッシュな緑色のソースが出来上がっていく。
 ソースができたと同時に、ちょうどよくパスタが茹で上がった。茹で汁をお玉一杯分取ってからザルにあげると、もくもくと湯気が立ち昇る。
 あらかじめ切って炒めておいた、厚切りベーコンが入っているフライパンに、茹で汁とオリーブオイルを足してよく乳化させてから、すぐにパスタとジェノベーゼソースも加えてトングを使って絡めていく。
「パスタはスピード勝負だから、段取りが命だ」
「私が生産性のない愚痴を言っている間にこんな下準備が行われていたなんて……」
「よし、できた。大盛りのジェノベーゼパスタだ」
 あっという間に出来上がった料理は、これまたグリーンが美しいパスタだった。
 緑のパスタの上に、厚切りベーコンの天盛りを添え、少し粉チーズをかけ、一枚のバジルを簪のように麺の間に刺している。
 美しすぎる盛り付けに、思わずため息が出た。
「俺しかいないんだから、たくさん食え」
 山盛りの太めのパスタに、鮮やかな緑色のジェノベーゼソースがしっかりと絡まっている。
 私はそれをフォークでくるくると巻き取ってから、口いっぱいに頬ばった。
 具材の厚切りベーコンの油と、バジルの香りが見事にマッチして、あまりの美味しさに言葉を失う。麺もモチモチで、カシューナッツのコクも感じる。
「草壁さん、これほんと美味しいですっ」
 空っぽだった胃が、暴力的に美味しいパスタで満たされていく。
 植物に囲まれた店内で、フレッシュな香り漂う料理をお腹いっぱい食べることが、こんなに幸福だなんて知らなかった。
美味しくて、癒される。その繰り返しだ。
無心で食べ続ける私を見て、草壁さんは一瞬笑った……ように見えた。
 それから、少し説教するかのように語りかけてきた。
「花井、食べることは生きることだ」
「え……」