最初は教わることがだるいと思ってしまっていたけれど、私はしっかり草壁さんの目を見つめてお礼を伝える。
「草壁さん、私この料理毎週作りますね! 本当にありがとうございます」
「いや、脂質も高いし毎週出されたら彼氏もキツいからやめておけ」
「本当にありがとうございます!」
草壁さんのマジレスを完全に無視して、私は自分でもこんなに美味しいご飯が作れたことに感動していた。
草壁さんと出会ってから、色んな経験が楽しいと思えるようになったな。
しかも、葵さんのようなお客さんとも友達になれたし……。
いつもの私だったら、今日という休日は、昼寝してスマホをいじって出前を取って終わっていた。
自分で作るという楽しさを、改めて草壁さんが教えてくれたから、今日はすごくいい休日になった。
「草壁さん、作るのって、食べるのと同じくらい楽しいですね」
笑顔でそう言うと、草壁さんはほんの一瞬だけ笑った気がした。
その日、私たちは三人でご飯を食べ終えて、葵さんの写真集の鑑賞会をしてから解散した。
〇
「はあー、お腹いっぱい」
そんなひとりごとを呟きながら、葵さん草壁さんとお別れして、エレベーターに乗っていた。
そしてロビーに着いてマンションを出ようとしたとき、どこかで見たことのある女性が私のことを凝視していた。
ぎょっとして立ち止まり、私も彼女のことを見つめていると、その女性はツカツカとヒールの音を立ててこちらに近づいてくる。
腰まで伸びたきれいな縦ロールに、お人形さんみたいな華やかな顔立ち……そうだ! お店で一瞬だけ会ったお客さんだ!
なんて思い出したときには、目の前に彼女がいた。
「あのっ、今このマンションから出てきましたよね! まさか爽君の部屋に行ってたんですか?」
「ま、まさか! 葵さんのお家にお邪魔して、草壁さんから料理指南を受けていました……」
「爽君とプライベートで会ってたんですか?」
私の言葉に、彼女……たしか芽依さんは元々大きな目をより大きく見開く。
ど、どうしよう……。ただただ鬼の形相で料理を監視され、無表情で手料理を食べきってもらっただけなんだけれど……。
しどろもどろしていると、芽依さんはそんな私にさらに苛立ったのか、ぼそっとつぶやくように言い放った。
「爽君、意外と素朴顔の子が好きなのかな……」
「素朴顔」
「草壁さん、私この料理毎週作りますね! 本当にありがとうございます」
「いや、脂質も高いし毎週出されたら彼氏もキツいからやめておけ」
「本当にありがとうございます!」
草壁さんのマジレスを完全に無視して、私は自分でもこんなに美味しいご飯が作れたことに感動していた。
草壁さんと出会ってから、色んな経験が楽しいと思えるようになったな。
しかも、葵さんのようなお客さんとも友達になれたし……。
いつもの私だったら、今日という休日は、昼寝してスマホをいじって出前を取って終わっていた。
自分で作るという楽しさを、改めて草壁さんが教えてくれたから、今日はすごくいい休日になった。
「草壁さん、作るのって、食べるのと同じくらい楽しいですね」
笑顔でそう言うと、草壁さんはほんの一瞬だけ笑った気がした。
その日、私たちは三人でご飯を食べ終えて、葵さんの写真集の鑑賞会をしてから解散した。
〇
「はあー、お腹いっぱい」
そんなひとりごとを呟きながら、葵さん草壁さんとお別れして、エレベーターに乗っていた。
そしてロビーに着いてマンションを出ようとしたとき、どこかで見たことのある女性が私のことを凝視していた。
ぎょっとして立ち止まり、私も彼女のことを見つめていると、その女性はツカツカとヒールの音を立ててこちらに近づいてくる。
腰まで伸びたきれいな縦ロールに、お人形さんみたいな華やかな顔立ち……そうだ! お店で一瞬だけ会ったお客さんだ!
なんて思い出したときには、目の前に彼女がいた。
「あのっ、今このマンションから出てきましたよね! まさか爽君の部屋に行ってたんですか?」
「ま、まさか! 葵さんのお家にお邪魔して、草壁さんから料理指南を受けていました……」
「爽君とプライベートで会ってたんですか?」
私の言葉に、彼女……たしか芽依さんは元々大きな目をより大きく見開く。
ど、どうしよう……。ただただ鬼の形相で料理を監視され、無表情で手料理を食べきってもらっただけなんだけれど……。
しどろもどろしていると、芽依さんはそんな私にさらに苛立ったのか、ぼそっとつぶやくように言い放った。
「爽君、意外と素朴顔の子が好きなのかな……」
「素朴顔」