慌てて対面式キッチンの中に入ると、草壁さんは食材をきれいに並べて準備万端の様子だ。
そして真剣な顔つきで、作業前に問いかけられる。
「まず何事も目的を決めることが大事だ。花井、なにか目標はあるのか」
「目標? えーっと、えっと……じゃあ、恋人に作っても恥ずかしくない料理ができるようになりたいです!」
「それは料理のできる恋人をつくればいいだけの話だ。却下」
「目標修正もされるんですかこれ?」
「冗談だ」
冗談が分かりづら過ぎて困るんですけど。
そんな言葉を飲み込んで、なんとか料理はスタートした。
「今日作るのは炙りサーモンアボカド丼だ。難易度は星一」
「出ました、アボカド……」
「今回はアボカド上できれいなXを描くなよ」
「なんでそんなこと覚えてるんですかっ」
過去の失敗をいじられながらも、落ち着いて一周すればいいと言われ、私はなんとかアボカドをきれいに切ることができた。
嬉しそうに草壁さんに見せつけると、真顔で「よかったな」と言われた。
相変わらず鉄仮面の草壁さんとは違い、葵さんは「上手に切れたね」とまるで親のように褒めてくれた。
「じゃあ次はサーモンに軽く塩コショウして……」
まな板の上に乗せたサーモンを見つめながら、草壁さんに言われた通りこなしていく。因みに材料費は全て草壁さんが出してくれたので、三人分作ることとなった。
久々に生魚に素手で触れたが、サーモンはしっとりひんやりとしていて、気持ちいい。
フライパンで油を熱し、そこにゆっくりサーモンを三切れ入れると、じゅわっという音を立ててサーモンの身が白くなっていく。
「しっかり焼かなくていい。レアの方が美味しいから」
「はっ、はい」
言われた通りにサッと炙る程度にして、コロッと身を裏返した。
周りだけ炙られた状態のサーモンをすぐにまな板の上に取り出し、半生の状態のそれを食べやすい薄さに切り落とした。
火が通っている部分が脆く、切るときに少しバラけてしまったけれど、きれいなレア状態に焼くことができた。
つやつやと輝くサーモンをそっとご飯の上に乗せて、分厚く切ったアボカドもきれいに盛り付ける。
最後にごま油と醤油を混ぜただけのタレを回しかけて、細かく切った万能ねぎを散らしたら完成だ。
「お、美味しそう……。サーモンがごま油で輝いてます……」
そして真剣な顔つきで、作業前に問いかけられる。
「まず何事も目的を決めることが大事だ。花井、なにか目標はあるのか」
「目標? えーっと、えっと……じゃあ、恋人に作っても恥ずかしくない料理ができるようになりたいです!」
「それは料理のできる恋人をつくればいいだけの話だ。却下」
「目標修正もされるんですかこれ?」
「冗談だ」
冗談が分かりづら過ぎて困るんですけど。
そんな言葉を飲み込んで、なんとか料理はスタートした。
「今日作るのは炙りサーモンアボカド丼だ。難易度は星一」
「出ました、アボカド……」
「今回はアボカド上できれいなXを描くなよ」
「なんでそんなこと覚えてるんですかっ」
過去の失敗をいじられながらも、落ち着いて一周すればいいと言われ、私はなんとかアボカドをきれいに切ることができた。
嬉しそうに草壁さんに見せつけると、真顔で「よかったな」と言われた。
相変わらず鉄仮面の草壁さんとは違い、葵さんは「上手に切れたね」とまるで親のように褒めてくれた。
「じゃあ次はサーモンに軽く塩コショウして……」
まな板の上に乗せたサーモンを見つめながら、草壁さんに言われた通りこなしていく。因みに材料費は全て草壁さんが出してくれたので、三人分作ることとなった。
久々に生魚に素手で触れたが、サーモンはしっとりひんやりとしていて、気持ちいい。
フライパンで油を熱し、そこにゆっくりサーモンを三切れ入れると、じゅわっという音を立ててサーモンの身が白くなっていく。
「しっかり焼かなくていい。レアの方が美味しいから」
「はっ、はい」
言われた通りにサッと炙る程度にして、コロッと身を裏返した。
周りだけ炙られた状態のサーモンをすぐにまな板の上に取り出し、半生の状態のそれを食べやすい薄さに切り落とした。
火が通っている部分が脆く、切るときに少しバラけてしまったけれど、きれいなレア状態に焼くことができた。
つやつやと輝くサーモンをそっとご飯の上に乗せて、分厚く切ったアボカドもきれいに盛り付ける。
最後にごま油と醤油を混ぜただけのタレを回しかけて、細かく切った万能ねぎを散らしたら完成だ。
「お、美味しそう……。サーモンがごま油で輝いてます……」