うすうす勘付いてはいたけれど、分かりやすい奴。
郡司はパアッと顔を明るくさせて、ほっとひと息ついていた。
告白はされていない。嘘じゃない。気持ちは分かってしまったけれど。
「よっしゃ、パパッと走り終わらせて、スマッシュの練習すんぞ」
「うん、そうだね」
僕は胸の中のモヤモヤを掻き消すように無心で走った。
皆が当たり前のように恋をしていることが羨ましい。
指定の黒ジャージに身を包んだ自分は、いったい“何者”なんだろうか。
最近は、この中性的な見た目のせいか、一部のアイドル好きの女子に学校一の王子様なんて呼ばれ始めている。
周りから見える僕と、本当の僕とのギャップに、たまに息が詰まりそうになる。
そんなある日だった。
いつも読んでいたファッション雑誌に、衝撃的な記事が取り上げられていた。
『今話題のジェンダーレス男子特集』
そんな特集名で大々的に載せられた男性たちのファッションは、まさに自分が求めているものそのものだった。
男っぽい部分もあるのに、レディースも上手く組み合わさっている。
男女差なんて関係ない、フラットで自由な服の組み合わせがそこに存在していた。なにより、本人にちゃんと似合っていることが衝撃だった。
僕という存在をカテゴリー分けするのであれば、僕はここが一番近いのかもしれない。
初めて自分の存在に名前がつけられた気がして、僕の脳内は一気に開けた。
本当なんだ。そのとき、サァッと風が心の中を吹き抜けて、自分の心が初めて正しい位置におさまった気がしたんだ。
その日から僕は、休日限定で、自分の好きな恰好をしてSNSにアップした。
クラスの人には秘密のアカウントで、地道にコーデをアップし続けていると、だんだん見てくれる人が増えていった。
ちょっと女の子っぽい服装に寄せても、SNSの反応は好意的だった。
【葵可愛い! なに着ても似合う】
【リップも自然ー! 本当おしゃれ!】
僕はそのコメントがすごく嬉しくて、ますますファッションに熱が上がった。
もしかしたら僕がモデルになったら同じように悩んでいる人の希望になれるかもしれない。
そのためにはまず、本当の僕のことを、リアルでも受け入れてもらえなきゃ始まらない。
大丈夫。きっと分かってもらえる。
そう思って、僕はまず郡司にそのことを伝えようと決意した。
郡司はパアッと顔を明るくさせて、ほっとひと息ついていた。
告白はされていない。嘘じゃない。気持ちは分かってしまったけれど。
「よっしゃ、パパッと走り終わらせて、スマッシュの練習すんぞ」
「うん、そうだね」
僕は胸の中のモヤモヤを掻き消すように無心で走った。
皆が当たり前のように恋をしていることが羨ましい。
指定の黒ジャージに身を包んだ自分は、いったい“何者”なんだろうか。
最近は、この中性的な見た目のせいか、一部のアイドル好きの女子に学校一の王子様なんて呼ばれ始めている。
周りから見える僕と、本当の僕とのギャップに、たまに息が詰まりそうになる。
そんなある日だった。
いつも読んでいたファッション雑誌に、衝撃的な記事が取り上げられていた。
『今話題のジェンダーレス男子特集』
そんな特集名で大々的に載せられた男性たちのファッションは、まさに自分が求めているものそのものだった。
男っぽい部分もあるのに、レディースも上手く組み合わさっている。
男女差なんて関係ない、フラットで自由な服の組み合わせがそこに存在していた。なにより、本人にちゃんと似合っていることが衝撃だった。
僕という存在をカテゴリー分けするのであれば、僕はここが一番近いのかもしれない。
初めて自分の存在に名前がつけられた気がして、僕の脳内は一気に開けた。
本当なんだ。そのとき、サァッと風が心の中を吹き抜けて、自分の心が初めて正しい位置におさまった気がしたんだ。
その日から僕は、休日限定で、自分の好きな恰好をしてSNSにアップした。
クラスの人には秘密のアカウントで、地道にコーデをアップし続けていると、だんだん見てくれる人が増えていった。
ちょっと女の子っぽい服装に寄せても、SNSの反応は好意的だった。
【葵可愛い! なに着ても似合う】
【リップも自然ー! 本当おしゃれ!】
僕はそのコメントがすごく嬉しくて、ますますファッションに熱が上がった。
もしかしたら僕がモデルになったら同じように悩んでいる人の希望になれるかもしれない。
そのためにはまず、本当の僕のことを、リアルでも受け入れてもらえなきゃ始まらない。
大丈夫。きっと分かってもらえる。
そう思って、僕はまず郡司にそのことを伝えようと決意した。