すると、そのひとくちでなにかが外れたのか、勢いをつけて葵さんはおにぎりを食べ続ける。
……それから、ぽつりと涙を流した。
「はは、ほんとだ、めっちゃ美味しい……」
笑いながら涙を拭う葵さんを見て、胸が締めつけられる。
「葵さん……、今回のこと……」
そう私が切り出すと、葵さんはおにぎりをひとつ食べ終えてから、ぐっと涙をもう一度拭って、自分の頬を両手でたたく。
そして、途方もないような声で、つぶやいたんだ。
「ゼロに戻ることは慣れてるはずなんだけどな……」
それは、過去に友達を一気に失った経験のことを言っているんだろう。
知っているからこそ、強がっている葵さんの言葉が胸に刺さる。
ゼロに戻ることに慣れているなんて、そんな悲しいことを言わないでほしい。
「本当はね、写真集が発売したあとに、ファンの皆にはイベントで直接伝えるつもりだった。事務所ともそういう風に相談してて、でもちょっと遅かったね」
「葵さん……」
「まあでもどっちみち、裏切られたっていう思いに、させちゃったから。写真集発売前にこんなことが起こって、今回の仕事でお世話になった人に、どれだけ迷惑かけるかとか考えてたら怖くなっちゃって、逃げてきちゃった」
そう言って力なく笑う葵さんの手を取って、私は葵さんにかける言葉を探した。
葵さんはちゃんと自分の言葉で伝える準備をしていたのに、事実とは違う言葉で、違う解釈でどんどんニュースは拡散されて。
本当の葵さんとかけ離れた人物像がネット上にできあがっている。
全部が全部否定的な意見ではないけれど、心ない言葉が半分だ。
どうしたら、あの偏見じみた言葉に打ち勝てるだろう。
葵さんが葵さんの人生を歩むことに、誰も口出しする権利なんかないのに。
悔しい。葵さんを元気にしたいのに、簡単な言葉しか出てこないよ。
「私、葵さんがどれだけこの仕事に本気だったか、少なからず知ってますっ……。だから、なにも知らない人に、こんな風に言われるの、本当に悔しい……」
「菜乃ちゃん……」
「葵さんは、本気で仕事してただけなのに……」
私が泣いてどうするんだ。だけど悔しくて涙が止まらない。うまく慰める言葉も思いつかない自分が歯がゆい。
だけど、私は自分が思っていることを、たどたどしくもそのまま言葉にして伝えた。
……それから、ぽつりと涙を流した。
「はは、ほんとだ、めっちゃ美味しい……」
笑いながら涙を拭う葵さんを見て、胸が締めつけられる。
「葵さん……、今回のこと……」
そう私が切り出すと、葵さんはおにぎりをひとつ食べ終えてから、ぐっと涙をもう一度拭って、自分の頬を両手でたたく。
そして、途方もないような声で、つぶやいたんだ。
「ゼロに戻ることは慣れてるはずなんだけどな……」
それは、過去に友達を一気に失った経験のことを言っているんだろう。
知っているからこそ、強がっている葵さんの言葉が胸に刺さる。
ゼロに戻ることに慣れているなんて、そんな悲しいことを言わないでほしい。
「本当はね、写真集が発売したあとに、ファンの皆にはイベントで直接伝えるつもりだった。事務所ともそういう風に相談してて、でもちょっと遅かったね」
「葵さん……」
「まあでもどっちみち、裏切られたっていう思いに、させちゃったから。写真集発売前にこんなことが起こって、今回の仕事でお世話になった人に、どれだけ迷惑かけるかとか考えてたら怖くなっちゃって、逃げてきちゃった」
そう言って力なく笑う葵さんの手を取って、私は葵さんにかける言葉を探した。
葵さんはちゃんと自分の言葉で伝える準備をしていたのに、事実とは違う言葉で、違う解釈でどんどんニュースは拡散されて。
本当の葵さんとかけ離れた人物像がネット上にできあがっている。
全部が全部否定的な意見ではないけれど、心ない言葉が半分だ。
どうしたら、あの偏見じみた言葉に打ち勝てるだろう。
葵さんが葵さんの人生を歩むことに、誰も口出しする権利なんかないのに。
悔しい。葵さんを元気にしたいのに、簡単な言葉しか出てこないよ。
「私、葵さんがどれだけこの仕事に本気だったか、少なからず知ってますっ……。だから、なにも知らない人に、こんな風に言われるの、本当に悔しい……」
「菜乃ちゃん……」
「葵さんは、本気で仕事してただけなのに……」
私が泣いてどうするんだ。だけど悔しくて涙が止まらない。うまく慰める言葉も思いつかない自分が歯がゆい。
だけど、私は自分が思っていることを、たどたどしくもそのまま言葉にして伝えた。