突然そう言われた私は、パッと目を逸らして自分の目を手で覆った。
「え、あ、最近寝不足で、目薬も効かなくて」
「まずはこれを飲め。熱いから持ち手以外触るなよ」
耐熱用のガラスポットをどんと目の前に置かれた。
何やらニラのような見た目の草がびっしりと入っている。
「こ、これは……ニラ……」
思わずつぶやくと、草壁さんに『そんなわけないだろ』と秒速で突っ込まれてしまった。
「これはレモングラスのハーブティーだ。緊張感を和らげて、落ち着かせてくれる。今、そっちの部署ピリピリしてそうだからな」
「あ……、私が営業部ってこと、知ってくれてたんですね」
「めちゃめちゃ大食いのやつが営業部にいるって有名だからな」
「ええ! そんな知られ方だったんですか!」
恥ずかしくてショックを受けていると、いいから飲めと催促された。
意外とせっかちだな、草壁さん……。
ショックを引きずりつつも、蓋を押さえながらとくとくとハーブティーをガラスの器に注ぐ。
すると、少しつんとした、でもすっきりとした香りが鼻を抜け、頭の中の靄が取れていくかのような感覚に陥った。
驚いた私は、思わずぽつりとつぶやく。
「すごく、優しい香り……」
「これは好みで入れて」
草壁さんのぶっきらぼうな言葉と共に、三cm程度の、銀の小さなカップがことりと置かれた。
「ラベンダーはちみつ。ハーブティーの香りも邪魔せず、相性がいいんだ」
「そ、そんなおしゃれがすぎること、アラサーリーマンがなぜ知ってるんですか……」
「いいから飲め」
あまりの知識量の多さにすでに圧倒されていた私だが、はちみつをゆっくりハーブティーに注いだ。
それから、いただきます、と言ってそのガラスのカップを口元まで運ぶ。
鼻の近くまで液面がくると、より一層気持ちが柔らかくなった。
はちみつの甘さと、レモングラスのすっきりとした香りが、喉元を通り過ぎていく。
なぜだろう。いい香りの温かい飲み物がお腹に入っていくだけの感覚なのに、体の中心から癒されて……。
気づいたら、ぽろっと涙が零れ落ちていた。
そんな私に気づいて、草壁さんはぎょっとしたように目を見開く。
「やめろ、泣くな。言っておくが俺は、相談事に乗っては格言めいたことを呟いてワイングラス磨いてるような、人情深いマスターじゃねぇぞ」
「え、あ、最近寝不足で、目薬も効かなくて」
「まずはこれを飲め。熱いから持ち手以外触るなよ」
耐熱用のガラスポットをどんと目の前に置かれた。
何やらニラのような見た目の草がびっしりと入っている。
「こ、これは……ニラ……」
思わずつぶやくと、草壁さんに『そんなわけないだろ』と秒速で突っ込まれてしまった。
「これはレモングラスのハーブティーだ。緊張感を和らげて、落ち着かせてくれる。今、そっちの部署ピリピリしてそうだからな」
「あ……、私が営業部ってこと、知ってくれてたんですね」
「めちゃめちゃ大食いのやつが営業部にいるって有名だからな」
「ええ! そんな知られ方だったんですか!」
恥ずかしくてショックを受けていると、いいから飲めと催促された。
意外とせっかちだな、草壁さん……。
ショックを引きずりつつも、蓋を押さえながらとくとくとハーブティーをガラスの器に注ぐ。
すると、少しつんとした、でもすっきりとした香りが鼻を抜け、頭の中の靄が取れていくかのような感覚に陥った。
驚いた私は、思わずぽつりとつぶやく。
「すごく、優しい香り……」
「これは好みで入れて」
草壁さんのぶっきらぼうな言葉と共に、三cm程度の、銀の小さなカップがことりと置かれた。
「ラベンダーはちみつ。ハーブティーの香りも邪魔せず、相性がいいんだ」
「そ、そんなおしゃれがすぎること、アラサーリーマンがなぜ知ってるんですか……」
「いいから飲め」
あまりの知識量の多さにすでに圧倒されていた私だが、はちみつをゆっくりハーブティーに注いだ。
それから、いただきます、と言ってそのガラスのカップを口元まで運ぶ。
鼻の近くまで液面がくると、より一層気持ちが柔らかくなった。
はちみつの甘さと、レモングラスのすっきりとした香りが、喉元を通り過ぎていく。
なぜだろう。いい香りの温かい飲み物がお腹に入っていくだけの感覚なのに、体の中心から癒されて……。
気づいたら、ぽろっと涙が零れ落ちていた。
そんな私に気づいて、草壁さんはぎょっとしたように目を見開く。
「やめろ、泣くな。言っておくが俺は、相談事に乗っては格言めいたことを呟いてワイングラス磨いてるような、人情深いマスターじゃねぇぞ」