「まずはこいつをお湯で戻してよく水を切る。ここでちゃんと切らないと、大豆臭さが無くならないから注意が必要だ」
 ちなみに、お湯で戻したあとのソイミートはスポンジみたいな感触だと言う。
 お湯で戻している間に、玉ねぎ、にんじんを細かく切って、ボールにあける。そこに戻したソイミートを加え、粗めの塩コショウをふって、卵、パン粉、牛乳を加えてよく混ぜる。
「ここに隠し味でソイバターも加える。これが入っていると、お肉の油みたいにジューシーになって美味しさが全然違うんだ」
「大豆でバターなんてあるんですね」
 感心したようにつぶやいているうちに、草壁さんはハンバーグの成形を始める。
 普通のハンバーグよりも大きめに作って、パンパンと音を立てて空気を抜き、それをフライパンで焼いていく。
 ジュワーッという音を立てて焼かれていくハンバーグを、フライ返しで返すと、ちょうどいい焦げ目がついていた。
「ハンバーグそのものじゃないですか……」
「すごいよ爽君、これなら罪悪感なしで食べられるね」
 私たちの驚きの声に少し誇らしげになりながら、数分蒸し焼きしたあと、畑で採れたレタスとミニトマトを飾ったお皿に、ハンバーグをそっと置く。
 そして、ハンバーグにスライスチーズをのせて、最後にトマトソースをかけたら完成だ。
「ソイミートチーズハンバーグだ」
 ふっくらと仕上がったそれは、まさにお肉そのもので、これが大豆だなんて思えない。
 目の前に出されたそれに、葵さんとふたりして口をあんぐりと開けてしまう。
「すごいよ爽君、こんなにボリューミーなのに全部大豆だなんて……」
「たまたま取引先である発酵食品の会社にもらったんだ。葵のおかげで思い出したよ」
「もう我慢できない! いただきまーす」
 そう言って、私と葵さんは大きな口を開けてハンバーグを頬張った。
 想像以上にお肉の味がした。
 牛ひき肉ほどの歯ごたえはないけれど、ふわふわとした食感で、豆腐ハンバーグよりもジューシーに感じる。
 味がたんぱくに感じられないのは、上に載ったチーズと、隠し味で入れたソイバターのおかげだろうか。トマトの酸味とも相性がいい。
 このボリュームで低カロリーなんて、信じられない。
 大食いの私でも大満足な量だ。
「お、美味しいです……草壁さん」