先生が捕まって、三日が経った。
ニュースでは先生の人生を馬鹿みたいに取り上げている。
世間では、完全に先生は悪者だ。
私は優しいあの人の、人生を壊してしまった。
私がやりたかったことと、全く違う結果になった。
ここまで来てやっと、先生の言葉の意味を理解していた。
「学級崩壊させてしまうようなクズだったのか。ケイ、本当に何もされてないか?」
コーヒーを持ってニュースを見ながら父親が言った。
私はソファのそばに立つ父親を、力いっぱい押した。
熱いコーヒーが父親にかかる。
「何するんだ!」
「先生は、クズなんかじゃない!私が……!」
そこまで言って、思いとどまった。
本当のことを言って、この父親が信じてくれるとは思えない。
帰ってきて最初に謝罪をされた。
苦しめてごめん、と。
本当に私のことを大事に思ってくれていると伝わってきた。
だからこそ、先生を庇うようなことを言ったって無駄な気がした。
私は自分を落ち着かせるためにも、ソファに座り直した。
父親は服を着替えに自室に行く。
父親が戻ってくるまで、反吐が出るようなニュースが流れていた。
聞いていられなくて、テレビを消す。
「……ケイ、何か言いたいことがあるなら聞くぞ?」
言いたいこと。
そんなの、たくさんある。
だけど、まず最初は。
「先生に、会いたい……会って、謝りたい……」
「謝る?誘拐されたお前が、どうして謝る必要があるんだ?」
父親の言葉に対して込み上げる怒りを、深呼吸して落ち着かせる。
「私が、先生頼んだの。死ぬつもりなら、私を誘拐して欲しいって」
驚いているような、信じられないような顔をしている。
でも、今は気にしていられない。
「お父さんの仕事のせいで、私はいつも近所の人に噂されてた。それが嫌で……でも、お父さんに仕事を辞めてほしいとも言えなかったから……他人に人生を壊されるのはどういうことか、思い知らせてやろうって……」
その結果、私が先生の人生を壊してしまったのだから、私は本当に馬鹿だ。
後悔していたら、父親が私の手首を掴んだ。
そして戸惑う私を無視し、引っ張り出す。
「ちょっと、どこに」
「あいつのところだ。会いたいんだろ?」
「え……」
会いたいのは会いたいけど、今の話を信じてくれたことに驚いた。
「俺のしてきた仕事がどういうものだったのかよくわかったし、知らぬ間にケイを傷つけてしまったのは俺だ」
車を運転しながら、そんなことを言うけど、やっぱりよくわからない。
「あいつに謝らなきゃいけないのも、お礼を言わなきゃいけないのも、全部俺だ」
私の話を聞いて、そこまで思ってくれたらしい。
上手く言い表せないけど、私は多分、嬉しかったんだと思う。
刑事さんを説得して、なんとか先生と会うことが出来た。
「ケイちゃん……と、お父さん、かな?」
ガラス越しの先生は優しく、だけど弱々しく笑った。
その笑顔が、私の犯した罪の大きさを物語っているように思った。
「ケイちゃんは、元気そうだね。あれだけ全国的に写真が出されてたけど、大丈夫?」
先生は私を責めたり、怒ったりしなかった。
こんな状況になっても、私の心配をしている。
「なんで……そんなに優しいの……?私のせいだって、言ってよ……」
溢れ出る涙を隠すために、両手で顔を覆う。
「ケイちゃん」
先生に呼ばれて、顔を上げる。
だけど視界がぼやけて、先生の顔を捉えることが出来ない。
「君は何も悪くないからね」
先生はどうして私がここに来たのか、わかっているみたいだった。
だけど私は首を振ってそれを否定する。
ニュースでは先生の人生を馬鹿みたいに取り上げている。
世間では、完全に先生は悪者だ。
私は優しいあの人の、人生を壊してしまった。
私がやりたかったことと、全く違う結果になった。
ここまで来てやっと、先生の言葉の意味を理解していた。
「学級崩壊させてしまうようなクズだったのか。ケイ、本当に何もされてないか?」
コーヒーを持ってニュースを見ながら父親が言った。
私はソファのそばに立つ父親を、力いっぱい押した。
熱いコーヒーが父親にかかる。
「何するんだ!」
「先生は、クズなんかじゃない!私が……!」
そこまで言って、思いとどまった。
本当のことを言って、この父親が信じてくれるとは思えない。
帰ってきて最初に謝罪をされた。
苦しめてごめん、と。
本当に私のことを大事に思ってくれていると伝わってきた。
だからこそ、先生を庇うようなことを言ったって無駄な気がした。
私は自分を落ち着かせるためにも、ソファに座り直した。
父親は服を着替えに自室に行く。
父親が戻ってくるまで、反吐が出るようなニュースが流れていた。
聞いていられなくて、テレビを消す。
「……ケイ、何か言いたいことがあるなら聞くぞ?」
言いたいこと。
そんなの、たくさんある。
だけど、まず最初は。
「先生に、会いたい……会って、謝りたい……」
「謝る?誘拐されたお前が、どうして謝る必要があるんだ?」
父親の言葉に対して込み上げる怒りを、深呼吸して落ち着かせる。
「私が、先生頼んだの。死ぬつもりなら、私を誘拐して欲しいって」
驚いているような、信じられないような顔をしている。
でも、今は気にしていられない。
「お父さんの仕事のせいで、私はいつも近所の人に噂されてた。それが嫌で……でも、お父さんに仕事を辞めてほしいとも言えなかったから……他人に人生を壊されるのはどういうことか、思い知らせてやろうって……」
その結果、私が先生の人生を壊してしまったのだから、私は本当に馬鹿だ。
後悔していたら、父親が私の手首を掴んだ。
そして戸惑う私を無視し、引っ張り出す。
「ちょっと、どこに」
「あいつのところだ。会いたいんだろ?」
「え……」
会いたいのは会いたいけど、今の話を信じてくれたことに驚いた。
「俺のしてきた仕事がどういうものだったのかよくわかったし、知らぬ間にケイを傷つけてしまったのは俺だ」
車を運転しながら、そんなことを言うけど、やっぱりよくわからない。
「あいつに謝らなきゃいけないのも、お礼を言わなきゃいけないのも、全部俺だ」
私の話を聞いて、そこまで思ってくれたらしい。
上手く言い表せないけど、私は多分、嬉しかったんだと思う。
刑事さんを説得して、なんとか先生と会うことが出来た。
「ケイちゃん……と、お父さん、かな?」
ガラス越しの先生は優しく、だけど弱々しく笑った。
その笑顔が、私の犯した罪の大きさを物語っているように思った。
「ケイちゃんは、元気そうだね。あれだけ全国的に写真が出されてたけど、大丈夫?」
先生は私を責めたり、怒ったりしなかった。
こんな状況になっても、私の心配をしている。
「なんで……そんなに優しいの……?私のせいだって、言ってよ……」
溢れ出る涙を隠すために、両手で顔を覆う。
「ケイちゃん」
先生に呼ばれて、顔を上げる。
だけど視界がぼやけて、先生の顔を捉えることが出来ない。
「君は何も悪くないからね」
先生はどうして私がここに来たのか、わかっているみたいだった。
だけど私は首を振ってそれを否定する。