「あのね、沙奈ちゃん……違うの……聖が……」
「ふーん……」

 沙奈ちゃんの視線が聖の方に向く。

「あの、沙奈ちゃん……?」

 沙奈ちゃんが何を考えているのかわからなくて、様子を伺うように聞く。
 私のほうを向いてくれた沙奈ちゃんは、何もなかったかのように笑った。

「やっぱどうでもいいや」

 ……どうでもいい、とは。

 少しだけど、沙奈ちゃんとの距離的なものを感じて寂しくなる。

「有川、その言い方はないんじゃねーの」
「だってこんなにややこしくなるなんて知らなかったし。面倒になってきたし。もう、結果だけでいい、みたいな?」

 本当にどうでもいいらしい。

「冷たい奴だなー」
「でも、私はそれくらいがちょうどいいな」

 恋愛は当人同士でしか解決できないもので、誰かに口出しされるのは好きじゃないから。

 なんて、今回は人に頼って意見求め続けたけど。

 結局優柔不断なのかな、なんて自分のことが嫌になり、苦笑する。

 すると、沙奈ちゃんは勢いよく抱きついてきた。

「ひなたのことが嫌いになったわけじゃないからね!」

 私が苦笑した理由を、沙奈ちゃんに嫌われてしまったから、と捉えたのか、沙奈ちゃんははっきり謝ってきた。

「大丈夫、わかってるよ」

 そして私と沙奈ちゃんは校舎に入った。