どんどん息苦しくなって、癖で聖に助けを求めようとした。
 聖はなぜか勝ち誇ったような表情を浮かべる。

 そして私の後ろに回り、顎を頭に乗せてきた。

「なるほどな。要は俺が羨ましいんだろ。可愛い女子と話せてるから」

 挑発的な言葉に、大ブーイング。

「ふざけんなー!」
「羨ましくなんかねーし!」
「なんでイケメンばっかなんだー!」

 心の叫びをそのまま口に出してる人もいる。

 私は視線だけ上に向けた。

「聖、なんでこんなこと」
「少しでも話題そらしときたいだろ。こういうときは真実なんていらないんだよ。いかにその話題を忘れさせることができるかなんだから」

 それもまた違うような気がするけど、いつもの聖に戻ったみたいでよかった。

 私たち、このまま幼なじみに……なんて、それはさすがに欲張りか。

「それで? なんでひなたは泣いてたの」

 本当の理由を話すべき相手がいたことを、少し忘れていた。
 沙奈ちゃんに聞かれて、聖は私から離れた。

 沙奈ちゃんは怒っているみたいで、思いっきり聖を睨んでいる。
 どうやら、聖が私を泣かせたと思っているらしい。

「恋人ごっこをやめただけ」
「……そっか」

 聖が言うと、沙奈ちゃんは私の頭を撫でた。

「つらかったね。よく頑張った」