そう思うとかなりつらくて、視界がぼやけていく。

「お姉ちゃん泣いてるの?」

 声がした方を見ると、五歳くらいの小さな女の子が心配そうに私を見上げていた。

「ちょっと冬花(ふゆか)! ごめんなさいね」

 その子のお母さんらしき人が、私に謝って冬花ちゃんを連れていこうとする。
 だけど、冬花ちゃんは本当に私を心配してくれているのか、離れようとしない。

 私は席を立ち、冬花ちゃんと視線を合わせる。
 そっと冬花ちゃんの頭に手を置く。

「お姉ちゃんは大丈夫だよ。アイスが美味しくて、涙が出そうになったの」

 これ以上心配させないよう、笑顔を作る。
 だけど、冬花ちゃんはじっと私の顔を見つめてくる。

「ふーかが知ってるお姉ちゃんのほうが可愛い」

 表情は固まり、冬花ちゃんから手を離す。
 舌足らずで自分の名前が言えていないとか、そういうことではなくて。

 なぜ私は今、初対面の少女に遠回しに貶された?

 冬花ちゃんのお母さんは、さっき以上に慌てて冬花ちゃんを引っ張る。

「冬花! いい加減に」
「だって、お兄ちゃんが持ってた写真のお姉ちゃんは、もっと元気に笑ってたもん! 今のお姉ちゃん、苦しそう!」

 冬花ちゃんはお母さんの言葉を遮って泣きながら訴えた。
 店内にいたほとんどのお客さんが私たちを見ている。