ひなたと気まずさを残したまま、昼休みになった。
 飲み物を持ってくるのを忘れた俺は、自販機に向かう。

 その途中、誰かが告白するような声が聞こえ、俺は思わず物陰に隠れる。

「近江君人気だし、私なんかがって思ってたけど……最近の近江君はなんだか、親しみやすいっていうか……その……」

 女子のほうが告白していて、相手はまさかの近江だった。
 このまま盗み聞きするのは気が引けたから、飲み物を諦めて教室に戻ろうとした。

「君の気持ちは嬉しいけど、僕、好きな人がいるんだ」

 近江のその言葉で、足が止まった。
 いけないとわかっていながら、聞き耳を立てる。

「それでも……いいです……」

 彼女は引こうとしなかった。

 まるで、俺みたいだ。

 自分のことを好きじゃなくてもいいから、付き合って欲しい。

 そう願う気持ちは嫌というほどわかる。

「……ごめんね。君がそれでよくても、僕が嫌なんだ。中途半端な気持ちで付き合って、君を傷つけたくないから」

 その言葉に、胸を締め付けられる。
 俺が間違っていたと、言われているような気分だ。

「……わかり、ました……困らせて、ごめんなさい」
「ううん。僕のこと好きって言ってくれて嬉しかったよ」

 二人の話は終わったみたいで、それ以上声は聞こえてこなかった。