「でも、いくら天形のことを忘れたくても、他人の好意を利用するような子じゃないじゃん、ひなたは。どうせ自分で言ったんでしょ。つらいなら利用しろって」

 まるで見て来たかのように言う。
 図星で、目をそらすしかなかった。

「本当に利用されてるってわかって、ショック受けてるとか……バカ?」

 返す言葉もないけど、もう少し柔らかく言ってくれてもいいと思う。

「……喜ばないのかよ」
「は?」
「睨むなよ……」

 ひなたに出会うたび、家族になる覚悟はできたかって言っていたくらいだから、てっきりよくやった、くらいは言うかと思ってたのに。

「私はただ、ひなたに幸せになってほしいだけ。ひなたに、本当に好きな人と結ばれてほしいだけ。つまり。ひなたが自分から、聖を選ばなきゃ意味がないの。無理やりとか、本当バカ」

 まるで俺が間違ってるとでも言いたいようだ。
 いや、そう言っているか。

 たしかに、無理やりはよくなかった。

 すると、夏希はもう一度、大きなため息をついた。

「で? どうしたいの」
「ひなたに笑っててほしい。できるなら、俺の隣で笑っててほしい。俺が幸せにしてやりたい」

 思っていることをそのまま言うと、夏希は抱きかかえていたクッションをさらにしっかりと抱えた。
 俺を軽蔑するかのような目で見てくる。