部屋に入って、乱暴に鞄を投げた。
 ドアに背中を預け、重力に従って床に座る。

「何考えてんだ、俺……」

 一方的に告白して、ほぼ無理矢理承諾させて。
 さらには勝手に嫉妬。

「……ガキかよ」

 自分の愚かさにため息が出る。

 あれだけ一途な人が、簡単に俺を好きになるなんて、ありえない。
 それをわかってたから、ひなたに利用してって言った。

 そして俺を選んでくれたから、少し期待した。

 でもやっぱり、違ったんだ。

 天形から連絡が来て、何か嫌なことがあって、俺を利用した。

 ……あんなこと、言わなきゃよかった。

 これならまだ、隣で天形を見続けてくれてたほうがよかった。
 手に入れたはずなのに、こっちを見てくれていないほうが、かなりつらい。

 手を伸ばせば届く距離にあるクッションを、思いっきり壁に投げつけた。
 壁に当たったクッションは、そのままベッドの上に落ちる。

 すると、ノックの音がした。

「聖、何か投げた? うるさいんだけど」

 夏希だった。
 その悪態は良しとしないが、なぜか落ち着く。

 夏希に話すと、今悩んでいることが解決するような気がした。

 俺は立ち上がり、ドアを開ける。

「うわ、死人がいる」

 面と向かって、容赦ない暴言を吐かれた。