聖の彼女になった日の放課後、私たちは一緒に帰ることになった。

 学校を出てすぐ、右側を歩く聖がそっと私の手を握った。
 驚いた私は、聖のほうを見上げる。

 聖は顔を背けていたけど、耳まで真っ赤だ。

 天形では絶対にありえないこと……じゃない。
 アイツのことは考えない。

「あれ、矢野? 海崎(かいざき)もいるじゃん。久しぶり」

 すると、前から勢いよく話しかけられた。
 それは、勝手に天形に私の連絡先を教えた奴だった。

「高井……? 久しぶりだな」
「おう。てか、もしかして二人やっぱ付き合ってたんだ?」

 高井の視線は下のほうを向いていた。
 何を見ているのかと思ったけど、すぐに聖と手を繋いでいたことを思い出した。

 私が恥ずかしくて離したいって思っているのが伝わったのか、聖は手を離して、私を背中に隠した。

「やっぱりって?」
「だって、お前らずっと引っ付いてただろ。まあ、矢野妹も一緒にいたけど」

 聖の背中越しに見える高井は、聖の質問に不思議そうな顔をして答える。

「ああ、そうだ。海崎、(あきら)から連絡あった?」

 少し顔を覗かせていたから、高井と目が合ってしまった。
 逃げるにも逃げられないけど、答えたくもない。

「天形から? なんで?」