だけど、そんな私をよそに、近江君は続ける。

「傷つけてしまったって、何様?って思うよ。矢野君が傷付いたって言ったの? 僕が見てた限り、矢野君は幸せそうだったよ」

 内容も内容だけど、それ以前にやっぱり気になる。

「近江君……そんなキャラだった……?」

 私のほうを向いた近江君は微笑んだ。

「演技をするのはやめたんだ。と言っても、ひなたちゃんが厳しく言って欲しいんじゃないかって、勝手に思ったところもあるけどね」

 あながち間違ってない……かもしれない。

 混乱しすぎて、自分がどう思ってるのかすら、よくわからなくなり始めている。

 お互い黙ってしまい、沈黙が流れる。

 すると、スマホにメッセージが届いた。

「……見ないの?」

 近江君に言われて、鞄からスマホを取り出す。
 送り主は沙奈ちゃんだった。

 泣いて飛び出したから、大丈夫?っていうメッセージだった。

 詳しく書かずに、大丈夫と返事をすると、またメッセージが届いた。
 天形からだった。

 恐る恐るメッセージを見てみる。

『元気』

 たったこれだけに半日もかけたのかと、若干怒りがこみ上げる。

『怒ってる?』

 相変わらずのガラスメンタルだ。
 返信する気力が失せる。

『ごめん』