「……そっちか」

 聖は苦笑した。

 私、変なこと言ったかな?

「……はちまき貸して」

 聖に言われて首にかけてた白のはちまきを渡す。
 靴に履き替えてからほかの生徒の邪魔にならないところで立ち止まる。

 中学時代からうまくはちまきを巻けなかった私は、聖にやってもらう。

「なあ、ひなた……はちまき交換のジンクス、知ってるか?」

 後ろに立った聖が髪に触れながら言った。

「ジンクス?」
「交換したら……優勝できるんだって」

 へえ、知らなかった。
 やっぱり先輩と接する機会が多い聖だから、得られた情報なのかな。

「じゃあ、交換する?」
「……いいの?」
「本当は沙奈ちゃんと交換したいけど、沙奈ちゃんは青だから。聖は一緒でしょ?」

 聖の顔を見ようと振り向こうとしたら、聖に頭を押さえられた。

「今から結ぶから、前向いてて」
「はーい」

 それからあっという間にはちまきが巻かれた。

「よし、できたよ」
「ありがとう、聖。そうだ、聖、私がはちまきやってあげようか? なんて、下手だから嫌か」

 自虐的に笑ったけど、聖にはちまきを渡された。

「……やってくれるんだろ?」

 私がやりやすいように聖はしゃがみ、私を見上げた。
 慣れないアングルに、聖相手なのに緊張してしまう。

「も、もちろん」