本当に私のこと……

 そう考えるけど、どうしても、それ以上は申し訳なさすぎて言葉に出来なかった。

「ごめん、気にしないで」

 私が困っていると、聖はそう言った。

 そんなことを言わせたいわけじゃなかったのに、でも、なにを言えばよかったんだろう。

 色々考えながら、昇降口に着いた。

「……ごめんね、聖」

 謝ったらいけないと思っていたのに、本人を目の前にし、あんなこと言われたら、つい口から出てしまった。

「え、俺、フラれた?」

 上履きに履き替えた聖は、目を見開いている。

「いや、あの……そうじゃなくて……」

 ふさわしい言い方が思いつかなくて、言葉を濁す。
 すると、聖は私の頭に手を置いた。

「困らせてごめんな。でも、これ以上辛そうなひなたを見たくなかったんだ」

 辛そうなのは、聖のほうに思えた。
 聖の泣きそうな笑顔に、胸が締め付けられる。

 私も上履きを履くと、私たちは教室に向かう。

「ねえひなた……俺を利用してよ」
「え……」

 寂しそうな声に、思わず立ち止まる。
 聖はそんな私と向き合うように立った。

「天形のことは忘れなくていい。でもそしたら、また嫌な思いをするかもしれないだろ? そういう、誰かに甘えたいってときは、俺に甘えて」

 唐突な提案に、頭が追いつかない。

 そんな私を見て、聖は笑う。
 久々に見る聖の笑顔に、なぜか安心した。

「つまり。ひなた、俺の彼女になって?」