聖は私の頬に指を当てた。

「俺はひなたのそういうところ、悪くないと思うけどね」

 反応に困っていたら、聖は流れるように私の手から荷物を取った。

 そして私が取り返せないようにするためか、聖は先を歩く。
 それも、私が追いつけそうで追いつけないペースで。

「……聖だって意地っ張りじゃん」
「俺はそんなことないよ。ただの意気地無しだから」

 振り向いた聖は、どこか寂しそうだった。

 どうしたのか聞こうとしたけど、そんな雰囲気でもなかった。

「聖……私なんかに構ってていいの?」
「なんで?」
「だって……好きな人くらいいるんじゃ……」

 そう投げかけると、聖は立ち止まった。
 ゆっくりと振り返り、真っ直ぐと私のほうを見てきた。

 その目から逃げられなくて、私も聖を見つめ返すような形になってしまう。

 聖は私の荷物を差し出した。
 戸惑いながら、それを受け取る。

 そして空いた手で、私を指さした。

「お前が好きだって言ったら、どうする?」

 予想にもしてなかった言葉に、体が固まる。

「え……と……」

 すると、聖は私の髪をぐしゃぐしゃにした。

「冗談だよ。好きってのは友達としてってことだから」

 私は聖の泣きそうな笑顔に、気付かないふりをした。