言葉足らずなことはわかってるけど、頭が回らなかった。

「あのとき、天形くん……ひなたを引き止めてなかった?」

 沙奈ちゃんに言われて、思い出す。

 何も考えられなくなったとき、たしかに天形に手を掴まれた。
 聖が怒ってくれたんだっけ。

「うわ……最低……クズだよ、クズ」
「なんで? ひなたのこと好きってことじゃないの?」

 何も知らない沙奈ちゃんだからこそ、言えることだ。
 なぜか、の答えは私の過去にある。

 それを勝手に話せないのか、夏希は私の顔を見てきた。

「私……天形に告白……みたいなことしたの。でも……天形は卒業するまで返事くれなかった」

 沙奈ちゃんは言葉を失っているようだった。

「信じらんない……たしかにクズだ……」

 私が思うことを吐き出したことで、天形の好感度がどんどん下がっていった。

 好きな人が周りに嫌われていくのは、正直いい気がしない。

でも、天形をフォローできない自分がいた。

「……私には答えをくれてなくて……私だけが忘れられなくて……天形はとうの昔に、私のことなんか忘れてた……私のことなんか、なんとも思ってない……」
「ひなた……」

 沙奈ちゃんも、私の背中をさすってくれる。