どうしても買いに行きたいというのが伝わってきた。
 それを聞いた沙奈ちゃんは説得するのを諦め、ため息をついた。

「わかった」

 お母さんの嬉しそうな顔を見て、少し癒された。

 ご飯を食べ終えると、お母さんは沙奈ちゃんに皿洗いを任せて、ケーキを買いに行った。
 私たちは沙奈ちゃんの皿洗いが終わるまで待って、沙奈ちゃんの部屋に戻った。

「よし。じゃあひなた、なんでも話して? まとまってなくてもいいからさ」

 変わらずお菓子が広げられたローテーブルを囲んで、夏希が一番に言ってくれた。

 混乱は続いたまま。
 上手く伝える自信なんてないけど、それでも聞いてくれると言う二人に甘えることにした。

「……天形、彼女がいた。その子の名前も呼んでた。なんで……? 私のときとは全然違う。どうして……私のこと、嫌いだったのかな……」

 吐き出してようやく、どこか楽になった。
 そのせいか、視界がぼやける。

「それは違うよ」

 夏希がそっと私の背中をさする。

「悪いけど、天形がどんな奴なのか、私はよく知らない。でも、そんな趣味の悪い嘘をつくような人じゃないでしょ?」

 こぼれる涙を拭う。

「でも……だったら……なんで……?」