「あの人がひなたちゃんの初恋相手なの?」

 黙って頷く。

「ひなたには悪いけど、あれのどこがいいの? 不良っぽかったし」
「有川」

 天形に対しての文句を並べる沙奈ちゃんを、聖が止めた。
 沙奈ちゃんは納得しないというような感じだったけど、口を閉じた。

 空気が重くなる。
 誰がどう考えても、私のせいだ。

「……みんな、心配かけてごめんね。せっかく楽しかった空気も壊しちゃって……」
「誰もひなたのせいだって思ってないよ」

 聖が慰めの言葉をかけてくれるけど、私は受け入れられなかった。

 あのとき私が振り返らなかったら、こんなことにはならなかった。
 天形のことを諦められてたら、彼女がいることにショックを受けることはなかった。

 頭ではわかっているのに、どうしても天形を諦めることができない。

 沙奈ちゃんが言うように、周りからみたら、天形は不良だ。
 だけど、一年間だけだったけど、天形の隣にいて、天形がどれだけ優しくて奥手なのかを私は知った。

 そんな天形に惹かれると、悪いところも含めて天形だって思うようになってきて、余計に諦められなかった。

「……ひなた、今日うちに泊まって、もやもやしてること全部吐き出そう。ちゃんと聞くからさ」

 沙奈ちゃんの提案が嬉しくて、私はうっすらと涙を浮かべながら頷いた。